金融正常化、いったん小休止=市場動向、米経済もリスク―植田日銀総裁
植田和男日銀総裁は20日の記者会見で、7月の政策金利引き上げ決定に続く、早期の再利上げに慎重な姿勢を示した。7月の決定後に株価や円相場が乱高下したほか、今回の金融政策決定会合直前には米国が4年半ぶりの利下げに踏み切り、米経済の先行き不透明感が強まっていることが背景にある。3月のマイナス金利解除後、日銀が進めてきた大規模金融緩和からの正常化は、いったん小休止する見通しだ。
「政策判断に当たっては、内外の金融市場の動きだけでなく、米国をはじめとする海外経済を丁寧に確認していく」。植田総裁は再利上げの判断を巡り、利下げ局面入りした米国が景気後退に陥るリスクを注視していく考えを表明。「すぐに利上げということにはならない」と強調した。
米連邦準備制度理事会(FRB)は18日に0.5%の大幅利下げに踏み切った。米経済が今後失速し、利下げペースが加速すれば、日米金利差が縮小し、急激な円高が進む恐れがある。
円高圧力が再燃し、国内輸出企業の収益が悪化すれば、それを嫌気して株価は下落、国内経済に悪影響が及ぶのは必至だ。日銀の2%の物価目標の実現シナリオも頓挫しかねない。
植田総裁は会見で「経済・物価見通しが実現していけば、緩和度合いを調整する」と語り、利上げ路線は堅持した。ただ、日米の金融政策が逆方向となる極めて異例な状況がいつまで続くかは不透明だ。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「米経済次第で、日銀の再利上げはかなり後ずれするリスクがある」と指摘している。
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