2024-09-14 14:12社会

殺人再審、7割「不服」=検察申し立てで開始遅れ―4年超も、無罪確定の17件・日弁連など

殺人で再審無罪となった事件と開始確定判断までに要した期間
殺人で再審無罪となった事件と開始確定判断までに要した期間

 殺人罪で有罪確定後に再審で無罪となった事件は戦後少なくとも計17件あり、うち7割に当たる12件で検察が裁判所の再審開始決定に抗告や異議申し立てをしていたことが日弁連などへの取材で分かった。有罪判決に疑いが生じながら再審が遅れる事態となっており、専門家は「非公開の再審請求審が長引いて公開の裁判が遅れるのは問題で、制度改正が必要だ」と指摘している。
 日弁連などによると、12件の中で再審開始の決定から確定の判断までの期間が最も長かったのは「布川事件」(茨城県)で、約4年3カ月かかった。水戸地裁土浦支部が2005年9月、強盗殺人罪などで無期懲役が確定した男性2人の再審開始を認め、08年7月に東京高裁が検察の即時抗告を棄却。その1年5カ月後に最高裁が特別抗告を棄却し、ようやく開始が決まった。
 最も短かったのは「東京電力女性社員殺害事件」(東京都)で、12年6月に再審開始を決めた東京高裁に対して検察が異議を申し立てたが、翌7月に棄却された。特別抗告はせず、決定からは約2カ月だった。「足利事件」(栃木県)など5件では、検察は再審開始を争わなかった。
 26日に静岡地裁で再審判決が予定されている袴田巌さん(88)の場合は約9年を要した。無罪が言い渡され確定すれば、検察の不服で開始が最も遅れたケースとなる。
 龍谷大の斎藤司教授(刑事訴訟法)は「検察の不服申し立てが再審開始を一層困難にしており、認めない法改正をすべきだ。有罪か無罪かは第三者の目が入り、審理のルールも明確な公開の法廷で決着をつけるのが望ましい」と話している。 

 
 ◇殺人の再審無罪事件
 事件名       発生年  主な罪名        有罪判決   無罪年
☆吉田       1913  強盗殺人        無期懲役  1963
 弘前         49  殺人          懲役15年   77
 加藤         15  殺人、強盗致死     無期懲役    77
☆免田         48  強盗殺人、同未遂    死刑      83
☆財田川        50  強盗殺人        死刑      84
☆松山         55  強盗殺人        死刑      84
☆徳島ラジオ商     53  殺人          懲役13年   85
☆梅田         50  強盗殺人        無期懲役    86
☆島田         54  殺人、強姦致傷     死刑      89
 貝塚         79  強姦殺人        懲役10年   89
 榎井村        46  殺人          懲役15年   94
 足利         90  殺人、わいせつ誘拐   無期懲役  2010
☆布川         67  強盗殺人        無期懲役    11
☆東京電力社員殺害   97  強盗殺人        無期懲役    12
☆大阪女児焼死火災   95  殺人、現住建造物等放火 無期懲役    16
☆松橋         85  殺人          懲役13年   19
☆湖東記念病院   2003  殺人          懲役12年   20
※☆は検察が再審開始決定に不服申し立てをした事件

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