パラスポーツ浸透の契機に=共生社会実現へ好影響〔パラリンピック〕
フランスで初の夏季パラリンピックは、国内社会に好影響を与え得る大会だったと評価できそうだ。8月28日の開会式で大会組織委員会のエスタンゲ会長は「革命が始まる」と宣言。五輪に負けない熱狂ぶりは、その言葉が決して誇張ではないと感じさせた。
近代五輪の創始者ピエール・ド・クーベルタン男爵を生み、「五輪先進国」とも言えるフランスは一方で、パラスポーツへの関心度や位置付けが決して高いとは言えない面があった。障害者への差別が少なくないという人権擁護団体の調査結果も出ていた。共生社会実現のメッセージを発信する場でもあった今大会。障害を抱えて生活している人たちの存在を認識し、理解するというステップがまず重要だった。
チケットの売り上げが250万枚を超え、パラスポーツを多くの人が目にする機会になった。授業の一環として約20万人の子供たちも会場へ足を運んだ。連日のように大声援が送られた会場には一体感が生まれた。「人々の見方を変えよう、2024年世代をつくろうとやってきた」とエスタンゲ会長。若い世代にパラスポーツを浸透させるきっかけづくりができた。
大会開催が決まった後にパリ市などがバリアフリー化を進め、開幕直前には約20年をかけた地下鉄の整備計画も発表された。パリを含むイルドフランス地域圏の自治体連合は大会閉幕後、近日中に会合を開く予定。関係者は「障害を抱える人のために、国だけでなく市でもできることがある。多くを変えるための最初のステップ」と意識を高めている。
大会から多くの人たちが肯定的なメッセージを受け取り、国や自治体も前に進み始めた。国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長は「パラリンピックの今後のベンチマーク(基準)になる大会」と賛辞を贈った。(時事)
[時事通信社]
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