「子どもたちのヒーローに」=金メダル手に「凱旋」―車いすテニス・小田選手〔パラリンピック〕
パラリンピック初出場ながら、引退した国枝慎吾さん(40)の後継者として大きな期待を集めてきた車いすテニスの小田凱人選手(18)=東海理化。「子どもたちのヒーローに」。自らの名前の由来となった「凱旋(がいせん)門」のあるパリで男子シングルス決勝に勝利し、待望の金メダルを手に日本へ「凱旋」する。
愛知県一宮市出身。9歳の時、左股関節に骨肉腫を発症した。約9カ月に及んだ入院生活の中で、出合ったのが車いすテニスだった。
小学4年の時の担任だった佐藤典子さん(58)は「誰にでも親切で優しかった」としつつ、「内に秘めた闘志を絶えず持っている子でもあった」と振り返る。例として挙げたのは、10歳の節目を祝う「2分の1成人式」。子どもたちが保護者らの前で将来の夢や日頃の感謝を発表する。
車いすテニスを本格的に始めたばかりだった小田選手は当初、「日本一になる」と書いた。しかし「もっと大きな夢にしてもいいのでは」という佐藤さんの助言を受け、内容を修正。当日は保護者らの前で「世界一になる」と宣言した。昨年、史上最年少で世界ランキング1位となり、「まさか本当にその通りになるとは」と驚く。
「子どもたちのヒーローになれるよう、全力プレーで頑張ってきてほしい」とエールを送ったのは、中学2年の時に担任だった溝口晃弘さん(33)。当時はコロナ禍で大会が開かれず、多くの時間を学校で過ごした。世界で活躍することを意識し、英語に力を入れて取り組んでいた姿が印象的だったという。
小田選手が練習拠点とする岐阜インターナショナルテニスクラブ(岐阜県岐南町)のオーナー呉岡勉さん(59)も「常に上昇志向が強く、ポジティブ。コロナ禍の頃はすごく練習を頑張っていた」とストイックな姿勢を評価していた。
わずか数年で、車いすテニスのトッププレーヤーへと成長した小田選手。ダブルスは決勝で苦杯をなめ銀メダルに終わったが、シングルスでは激闘の末に相手を下し、憧れだった国枝さんに続く栄冠を手にした。
[時事通信社]
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