信長の新たな書状発見=幕府滅亡の前年、将軍側近宛て―熊本大など
熊本大と、肥後細川家の文物を所蔵する永青文庫(東京都文京区)は6日、同文庫の収蔵庫から、織田信長が同家初代の細川藤孝(1534―1610)に宛てた未知の書状を発見したと発表した。書かれた時期は、室町幕府滅亡(1573年)の前年と判明。当時、将軍足利義昭の側近たちが信長との対立を深める中、唯一信長と通じていた藤孝との関係を示すものだという。
藤孝は義昭の側近として頭角を現し、1568年に信長が義昭を奉じて上洛するきっかけを作った。両者はしばらく協調していたが次第に対立。書状が出た72年には、石山本願寺などの反信長連合が形成されるなど情勢は緊迫していた。翌73年2月に義昭は挙兵し、逆に信長に包囲され失敗。同年7月に京都を追放され、幕府は滅亡した。
書状は2022年8月、熊本大と同文庫の共同調査で見つかった。信長から藤孝宛ての礼状で、他の側近たちが絶交状態にある中、藤孝だけが進物を贈ったことに謝意を示すとともに、京都や石山本願寺のある現在の大阪周辺の領主たちを味方に引き入れる工作を依頼していた。
当時の書状は年号を入れないのが一般的で、この書状も「8月15日」という日付しかなかったが、信長の花押(サイン)の形の変化などから、幕府滅亡前年の1572年と判断した。
調査を行った熊本大の稲葉継陽教授によると、同文庫には59通の信長からの書状があるが、今回のものが一番古いという。稲葉教授は「今までの59通で考えられてきた信長と藤孝の関係以前の段階が明らかになっており、極めて重要だ」と話した。
書状は10月5日から、同文庫で一般公開される。
[時事通信社]
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