ディープフェイク性犯罪が深刻化=未成年者に被害、大統領「根絶」指示―韓国
【ソウル時事】韓国で人工知能(AI)を用いた精巧な偽画像・動画「ディープフェイク」による性犯罪が深刻化している。女性の顔写真をわいせつな画像や動画に合成し、通信アプリなどを通じて共有される被害が未成年者に拡大。政府や警察が対策に動きだした。
◇被疑者の7割が10代
警察庁によると、ディープフェイクによる性犯罪は2021年は156件だったが、今年は7月までに297件に上った。被疑者の約7割を10代が占め、加害者も被害者も未成年という場合が多い。
加害者側はグループで、顔見知りの女性などの顔写真を通信アプリ「テレグラム」で共有し、ディープフェイクを作成。被害者が在籍する学校ごとに分類してチャットルームを作り、画像や動画をメンバーの間で共有するケースが多い。
SNSには最近、被害を受けたとされる小中高校や大学の校名を記載したリストが上がっている。写真が使われるのを防ぐため、子どものSNSのプロフィル写真や投稿を削除する動きも広がっている。
◇厳罰化求める声
尹錫悦大統領は27日の閣議で、こうした被害に言及し、「明白な犯罪行為だ」と指摘。「デジタル性犯罪の根絶」を訴え、対策を関係部署に指示した。警察は28日、7カ月間の集中取り締まりに乗り出した。
被害が深刻化する中、厳罰化を求める声も上がる。20年の法改正で、流出させる目的でディープフェイクを作成した場合は5年以下の懲役または5000万ウォン(約540万円)以下の罰金に処されるよう罰則が強化されたが、実際は前科がないなどで執行猶予になる場合が多いと指摘される。また、被害者が成人の場合は流出の意図なく作成したり、視聴、所持しただけでは処罰の対象外。政府は30日、視聴や所持の場合も処罰対象とするよう法改正を進める方針を決めた。
画像や動画が流出して広まってしまえば、地道に削除するしかない。女性家族省傘下の韓国女性人権振興院に置かれた「デジタル性犯罪被害者支援センター」は既に、海外も含めた成人サイトを24時間監視するシステムを構築。流出が判明した場合にはサイト側に削除を要請している。
ただ、テレグラムは秘匿性が高い上、海外の通信サイトであるために対応を強制できないという事情がある。当局は、テレグラムなどのプラットフォーム運営側に協力を要請する方針だが、協力を得られるかどうかは不透明だ。
[時事通信社]
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