西側兵器使用、あいまいな線引き=難民に帰国圧力も―岐路のウクライナ支援・侵攻2年半
【ベルリン時事】ロシアがウクライナに侵攻を始めて、24日で2年半。終着点が見えない中、米欧のウクライナ支援は岐路に立っている。ウクライナ軍のロシア領への越境攻撃では、西側諸国が供与した兵器が多数投入されたことが判明。どこまで使用できるか線引きがあいまいなまま、ロシアにとっての「レッドライン」(越えてはならない一線)を試す神経質な状況が続いている。一方、ウクライナ難民を積極的に受け入れてきた支援国では、負担感から帰国を促す圧力が高まっている。
◇長距離ミサイル焦点
ウクライナ軍は、今月開始したロシア西部クルスク州の越境攻撃で、英国製主力戦車「チャレンジャー2」を投入。補給路寸断には米国製の高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)を使用した。ドイツ製歩兵戦闘車「マルダー」もロシア領に入ったもようだ。各国は推移を見守る姿勢で、兵器使用を容認している。
西側はレッドラインを越えれば、戦火拡大やロシアの核兵器使用の引き金となると警戒し、ウクライナ国内での使用を前提に武器を供与。ウクライナもこうした事情を踏まえ、ロシア領内への攻撃には自国製ドローンを使ってきた。しかし、この前提が崩れ始めている。
現在の焦点は長距離ミサイルの運用だ。英紙タイムズによると、英国は、供与した射程250キロ以上の巡航ミサイル「ストームシャドー」を使ってウクライナ軍がロシア領の軍事拠点を攻撃することに前向き。しかし「米国が待ったをかけている」という。
米国防総省の副報道官は15日、ウクライナ領土の奪還に、ロシア領内へのミサイル攻撃は必須ではないとの見方を示し、「当然エスカレーションを心配している」と述べた。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、ロシアがクルスク州への進軍に対して強い対抗措置を取っていないことから、「一部のパートナーが抱くレッドラインという幻想は崩れた」と主張。ミサイル運用を巡り激しい綱引きが行われている。
◇「絶対助ける」回答半減
ウクライナが戦果を急ぐ背景の一つは、支援機運の低下だ。100万人以上のウクライナ難民を抱えるドイツでは、財政負担などを理由に待遇の見直しが議論され始めた。支持率トップの保守野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の幹部からは「ドイツで仕事を始めるか、ウクライナの安全な地域に戻るかだ」と厳しい声が上がっている。
ポーランドも同規模の難民を引き受けているが、5~6月実施の世論調査では、ウクライナを「絶対に助けるべきだ」との回答は31%と、昨年1月時点から半減。定住を前提とした受け入れへの賛成は17%にとどまり、回答者からは「援助への感謝がない」などと不満が噴出した。
兵力不足が深刻なウクライナは、外国に滞在する徴兵対象者の帰国を求めている。ポーランドは今年7月、在留ウクライナ人の志願兵部隊の編成と訓練に着手した。シコルスキ外相は、多くのウクライナ人は徴兵に応じる意欲はあるが、「訓練や装備なしでの戦地投入」を懸念していると指摘。他国もポーランドに倣うよう求めた。
[時事通信社]
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