首相、脱デフレ道半ば=内政課題、ポスト岸田に
岸田文雄首相の退陣により、内政の重要課題は次期首相に引き継がれる。首相は「デフレからの脱却」を目指して賃上げに注力。実質賃金はプラスに転じ、少子化対策強化に向けた法改正も果たしたものの、積み残しとなった懸案は多い。
「方向性を次につなげていきたい」。首相は21日、公明党の山口那津男代表と首相官邸で会談し、こう伝えた。9月の自民党総裁選不出馬を表明した14日の記者会見でもデフレ脱却や原発再稼働の必要性を訴えた。
首相は就任以来、「新しい資本主義」を旗印とし、「物価高を上回る賃上げ」を重要課題に据えた。機会あるごとに経済界に賃上げを要請してきた。
今年の春闘では5%を上回る賃上げを実現。今月発表された6月の実質賃金は2年3カ月ぶりにプラスに転じた。首相周辺は「これまでやってきたことが表れてきた」と成果を誇ったが、「ボーナスが反映された一時的なもの」(政府関係者)との見方もある。次期首相には「物価と賃金が共に上がる好循環」を確実にできるかが問われる。
首相は「異次元の少子化対策」を掲げ、6月に改正子ども・子育て支援法を成立させた。対策強化のため医療保険料に上乗せした「支援金」を導入する。国会で「実質的な追加負担はない」と繰り返したが、負担額を巡る政府側の説明は不安定で、国民の理解が得られたとは言い難い。財源とする歳出改革の具体策も制度設計はこれからで、人口減少対策は道半ばだ。
原発を巡っては、東京電力福島第1原発事故後の政策を大転換。建て替えや運転期間延長にかじを切った。経済界では脱炭素化を進めるための原発活用論が根強い。政府は「エネルギー基本計画」改定の議論を進めており、原発の位置付けが焦点になる。
ロシアのウクライナ侵攻や急激な円安を受け、首相は物価高対策に追われた。いったん終了した電気・ガス料金の補助は8月に再開。1人4万円の「定額減税」も物価高対応の一環だが、財政規律の面から政府内でも疑問の声が上がった。首相は秋に経済対策を策定する意向を示していたが、この扱いも次期首相の判断に託される。総裁選では経済対策や財政健全化を巡って論戦が交わされそうだ。
[時事通信社]
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