ラム酒で地域活性化を=「架け橋に」と角田市の男性―東北初の蒸留所目指す・宮城
16日は、サトウキビを原料とする蒸留酒「ラム酒」の日とされる。中米・カリブ海の酒というイメージが強いが、宮城県角田市で蒸留所の開設を目指す目黒幹彦さん(56)は地域活性化のため、「次の時代への架け橋になるような酒造りをしたい」と意気込む。
ラム酒はサトウキビの糖蜜や搾り汁を発酵させ、蒸留して造られる。国内の蒸留所は西日本や沖縄が中心で、生産者やバーテンダーらでつくる業界団体「ラムクラブジャパン」によると、開設されれば東北地方で初になるという。
目黒さんがラム酒と出合ったのは大学生時代。当時ジャマイカの歌手ボブ・マーリーをはじめとしたレゲエ音楽に魅了され、同じく中米が発祥とされるラム酒にも関心を抱いた。
東京都内の食品関連会社に就職後、長らく地元の角田市を離れていたが、結婚して子どもが誕生すると伸び伸び育てられる地方の生活環境の良さに気付いた。2005年に転勤のない会社に移り、同市に帰郷。豊かな自然を満喫する一方、「地元に元気がない」とも感じていた。
転機となったのは22年。地域貢献に取り組もうと、思い切って会社を早期退職した。市が開催する無料の市民講座で、創業支援などを行うコースを受講し、ラム酒蒸留所を開設する計画を立てた。
だが、現実は甘くなかった。開業の前提となる酒類製造免許の申請には、蒸留所などでの勤務経験が必須。研修を受け入れる事業所を探したが、受け入れてくれる事業者はなかなか見つからなかった。
企業などに半年以上メールや電話を繰り返した結果、同じく1人でラム酒を製造する天神村醸造所(愛媛県内子町)の亀岡晶子さん(52)に出会った。亀岡さんは「突然の連絡だったが、メールの文章に目黒さんの真面目な人柄が表れていた」と振り返る。
目黒さんは昨年11月、亀岡さんの下で約2週間かけて原料発酵から蒸留まで一連の工程を学んだ。現在は角田市の商工会と相談しながら事業計画を磨き上げ、年内にも税務署に製造免許を申請し、開業する予定だ。
「住んでいる人は少なくなっても、好きなことを楽しくやるのがいい」と目黒さん。「『田舎だけど面白い街だ』と思ってもらうきっかけになれば」と話した。
[時事通信社]
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