「家族思いの兄」しのび献花=96歳遺族、平和へ祈り―戦没者追悼式
全国戦没者追悼式に神奈川県の遺族代表として献花した高橋和彦さん(96)=川崎市=は、兄冨彦さんを太平洋戦争で亡くした。「家族思いだった」という兄をしのび、改めて平和を願った。
和彦さんは7人きょうだいの末っ子。冨彦さんは2番目の兄で、戦争で通常より3カ月早い1941年12月に早稲田大理工学部を卒業し、重機メーカーに就職した。翌月に徴兵され、岩国海軍航空隊(山口県)に入隊した。当時、和彦さんは旧制中学1年だった。
「真面目な性格だった」という兄の冨彦さん。理系だが読書好きで、和彦さんに「これ読め」と本を買ってくれたこともあった。戦地から戻った際には「これで汁粉でも作って飲みなさい」と台湾で購入した砂糖を渡すなど、「家族思いだった」と振り返る。太平洋のトラック諸島から帰った時は「(滑走路を造るための)ブルドーザーと鉄板が足りない」と嘆いていた姿をよく覚えている。
「また必ず帰ってくる」。そう信じ続けた父の願いはかなわず、冨彦さんは終戦間際の45年4月、フィリピンで戦死した。27歳だった。
その後、国から遺骨を受け取りに来るよう家族に通知があり、戦死を知った。受け取った骨箱は「紙しか入っていないんじゃないか」と思うほど軽かったという。父は戦後間もなく亡くなっており、「帰ってきておやじと会えればよかったな」「どうして死んじゃったのかな」。さまざまな思いが胸をよぎった。
平成に入ってから国などの支援を受けて慰霊のためフィリピンを2回訪れ、戦没者追悼式にも参加するようになった。終戦から79年。交流していた遺族も少なくなった。追悼式ではただ平和を祈り、「安らかにお休みください」と花をささげた。
[時事通信社]
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