「緊張感保つ」「備え続ける」=太平洋側の高齢者施設など―南海トラフ、臨時情報呼び掛け終了
南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震注意)」発表に伴う防災呼び掛けは15日午後5時に終わったが、甚大な被害が想定される太平洋側の高齢者施設では職員が「緊張感を保ち、入所者の命を守る」と改めて力を込めた。キャンセルが相次いだホテルなどでは客足の回復を願う声が聞かれた。
高知市の特別養護老人ホーム「海の里」には24時間介護が必要な59~104歳の79人が入所する。南海トラフ地震発生時には津波が30分以内に到達すると想定され、入所者を交えた避難訓練を毎年行っている。
ただ、夜間には職員が4人だけになる時間帯もあり、難波自施設長は「地震が夜起きたら全員無事に避難できるか心配だ」と不安をこぼす。「南海トラフ地震は来ると言われ続け、元日には能登半島地震も起きた。緊張感を保ち、避難方法を改めて検討して入所者らの命を守りたい」と話した。
和歌山県白浜町は15日午前、臨時情報を受けた海水浴場4カ所の閉鎖を解除した。町の担当者は「避難誘導の手順や経路を再確認した。地震に備えつつ遊泳を楽しんでほしい」と話す。
宮崎市のホテル「ANAホリデイ・インリゾート宮崎」では、8日の地震発生後から宿泊予約のキャンセルが相次いだ。翌日以降、宿泊客にはチェックイン時に避難経路図を配布して対応した。児玉麻衣シニアマネジャーは「災害はいつ起きるか分からない。宿泊客の安心安全を第一にし、今後も万全の対策を講じたい」と語った。
静岡県沼津市の温泉旅館「西伊豆戸田温泉ときわや」でもキャンセルが続いた。臨時情報発表後、フロントにハザードマップを置き、宿泊客を避難誘導する際の役割分担を確認するなどの対応を取った。
施設の担当者(31)は「臨時情報を機に職員間で避難経路を確認できたのはよかった。今後は宿泊客に加え、外からの避難者への対応も検討したい」と話す。台風7号が接近しつつあり、担当者は「情報を逐一確認し、何か起きたらマニュアルに沿い避難誘導したい」と警戒を続けた。
釣り客を磯釣りに案内する三重県尾鷲市の「川端渡船」は15日まで休業し、約45組の予約を断った。川端徹社長(65)は「繁忙期の休業はきつかった」と振り返る。磯釣りへの案内は16日に再開する一方、川端社長は「客が戻ってくるのを期待しているが、本当に戻ってくるのか」と不安そうに話した。
[時事通信社]
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