遺族の81歳男性「戦争は人生奪う」=生後間もなく父召集―埼玉・終戦記念日
15日の全国戦没者追悼式で埼玉県の遺族代表として献花した栗原健昇さん(81)=同県熊谷市=の父は、栗原さんの生後間もなく海軍に召集され、サイパンで亡くなった。父の無念や母の苦労に思いをはせ、栗原さんは「戦争は国民の人生を奪う」と悲惨さを訴える。
父竹治良さんは、母雪江さんと1940年に結婚。栗原さんと、3歳年上の兄貴美さんをもうけ、東京でワイシャツ店を営んでいた。
43年6月、26歳で横須賀第一海兵団に入団。当時栗原さんは生後5カ月、兄は3歳だった。「妻帯者にまで召集令状が届くということは、(日本が)負けているのかな」。そう父がつぶやいていたと、雪江さんから伝え聞いた。
竹治良さんは翌年、第503海軍航空隊の所属となり、サイパンで従軍中に死亡した。栗原さんに父の記憶はなく、写真を通して知るのみだ。幼い子どもを残し戦地に赴かなければならなかったことに、「後ろ髪を引かれる思いだったろう」と思いやる。
出征後、雪江さんは雨が降る中でも子どもをおぶってワイシャツ店の取引先を回った。「惨めな思いをした」と漏らすことはあったが、竹治良さんについて話したり、寂しい表情を見せたりしたことはほとんどない。「2人の子どもを育てるのに必死だったからだろう。父に会いたかったはずだ」と推し量る。
栗原さんは2013年、日本遺族会が主催する慰霊友好親善事業でサイパン島を訪れた。遺骨は家族の元に戻っておらず、激戦が行われた海岸で「お父さん、迎えに来たよ」と呼び掛けた。
戦争がなければ、「父のワイシャツ店を継いでいたかも」とほほ笑む栗原さん。「戦争をしてはならない」と力強く語った。
[時事通信社]
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