日韓改善を実現、防衛力強化も=統一教会・派閥裏金で支持低迷―岸田首相
岸田文雄首相が14日、退陣を表明した。戦後最悪とされた日韓関係の改善を実現。厳しさを増す日本周辺の安全保障環境を踏まえ、防衛力の強化にも取り組んだ。ただ、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党の関係や、派閥の裏金事件に世論が反発。内閣支持率の低迷に苦しんだ。
首相は就任直後の2021年10月に衆院解散・総選挙に踏み切り、自民単独で安定して国会を運営できる「絶対安定多数」の261議席を獲得。翌22年7月の参院選も勝利し、安定した政権基盤を築いた。
外交・安保分野では、懸案だった元徴用工問題の解決策を韓国側が示したことを受け、尹錫悦大統領との「シャトル外交」を復活させた。首相は14日の記者会見でも「日韓関係の正常化を一層確かなものにしないといけない」と強調した。
覇権主義的な動向を強める中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮などを念頭に、自衛隊の反撃能力(敵基地攻撃能力)保有を認め、戦後の安保政策を大きく転換。防衛力強化のために23年度から5年間の防衛費を43兆円に増額する方針も決めた。
経済分野でも、首相はデフレから脱却して「物価高を上回る賃上げ」を実現する目標を掲げ、今年の春闘の平均賃上げ率は5%を超えた。
一方、安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、党所属議員と旧統一教会の密接な関係が表面化し、世論の厳しい批判を受けた。旧統一教会の解散命令請求を行い、被害者救済法を成立させたが、政権は大きなダメージを受けた。
支持率が低迷する中、追い打ちとなったのが自民派閥の裏金事件だ。安倍、二階両派だけでなく、首相が会長を務めていた岸田派でも元会計責任者が略式起訴された。
首相は関与した閣僚らを交代させ、党所属議員の処分も行った。しかし、党総裁として自身の処分を見送ったことで、党内に強い不満を残した。
裏金事件を受けた派閥の解散表明や、改正政治資金規正法の国会対応は、政権を支える麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長との関係に溝を生んだ。衆院議員の任期満了が25年10月に迫り、首相の政権運営は追い込まれていた。
[時事通信社]
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