ウクライナ、世界に示した勇姿=戦渦の母国へ光―パリ五輪〔五輪〕
ウクライナ選手団にとって、戦渦で迎えた「最も困難な五輪」が幕を閉じた。過去最少だった約140人の選手は、金3を含むメダル12個を獲得。母国の誇りを胸に、苦境に立たされても勇敢に立ち向かう姿は世界の人々の胸を打った。
陸上女子走り高跳びの世界記録保持者ヤロスラワ・マフチフは、国旗と同じ青と黄色のアイメークを施して臨み、2メートル00で金メダルに輝いた。約7万人の前で不撓(ふとう)不屈の精神を示し、銅を獲得した2人のチームメートと共に国旗を掲げた。
マフチフは記者会見で苦しい胸の内を訴えた。「競技に集中することは不可能。母国には家族や、国のために戦っている友人たちがいる。このことを忘れることはできない」。2022年2月から続くロシアの侵攻により、選手と指導者は計500人近くが命を落とした。「メダルは戦争で亡くなった彼らのためのもの」。22歳の言葉は重かった。
5度目の五輪となったフェンシング女子サーブルのオリガ・ハルランは約2年間、家族と離れてイタリアで鍛錬を積んできた。個人で母国に今大会初メダルとなる銅をもたらし、団体では金をつかんだ。「国のためのメダルだから特別。決して諦めない姿を示した」
家族や友人を失った選手もいる。ウクライナ・オリンピック委員会のフトツァイト会長は「戦渦で国を代表してここにいることが既に勝利」と言った。大勢の観客がウクライナ勢に大きな声援と拍手を送り、背中を押した。不安や悲しみを胸にしまい、大舞台で懸命に戦った選手は、母国の希望の光となっただろう。
一方で、ロシアは国を代表しない「個人の中立選手(AIN)」として約15人が参加した。ロシアのAINで唯一のメダルとなる銀を獲得したテニス女子ダブルスの選手は、政治に関する質問の回答を拒否。「スポーツ大国」はパリで陰に隠れた存在だった。 (時事)
[時事通信社]
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