観客の熱、大きな後押し=ピンチで励ます拍手〔五輪〕
新型コロナの影響が色濃かった東京五輪から3年。感染症対策による制限が解消され、本来の姿を取り戻して迎えた五輪で連日見られたのは、四方から飛び交う声援だった。
レスリング男子の高谷大地(自衛隊)は苦しい終盤に耳まで届いた声に勇気づけられた。「日本コール、大地コールがあった」。準決勝で格上の米国選手を破る底力は、孤独な戦いの中では発揮できない。「常に背中を押してもらえた。それが一番の勝因」と振り返る。
飛び込み会場では、得点を思うように伸ばせていなかった選手に、励ましの大きな拍手が送られた。アスリートの心が折れそうな場面で寄り添うようなスタンドの雰囲気は温かかった。
陸上が行われた約7万人収容のフランス競技場は、午前から大観衆を集めた。競泳会場も午前の予選から開場前に長蛇の列。駆け付けた観客が身にまとう国旗はトリコロールカラーだけではない。スペインやアイルランド、英国。地理的に近い欧州各地から押し寄せるファンがそれぞれ自国の選手を声や鳴り物で後押し。どのレースの雰囲気も熱を帯びた。
「最大級の盛り上がりを体感できた」と言ったのは東京五輪女子個人メドレー2冠の大橋悠依(イトマン東進)。この3年の競技成績が振るわず、「本当にしんどかったし、何回もやめておけばよかったなと思った」が、本来の熱狂が恋しくてここまで続けてきた。「夢に見ていた有観客の五輪。楽しかった」という言葉に実感がこもった。 (時事)
[時事通信社]
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