藤波、圧巻の金メダル=恐怖と闘い、悲願成就―レスリング〔五輪〕
表彰台の真ん中で君が代を聞くと、いとおしそうに胸に輝くメダルを見詰めた。レスリング女子53キロ級で五輪初制覇を遂げた藤波朱理選手(20)=日体大=は「この瞬間を願い続けてここまでやってきた。本当にうれしい」と、とびきりの笑顔を見せた。
ルシア・ジェペス選手(エクアドル)との決勝は圧巻だった。前に出てくる相手の動きを止め、バランスを崩したところにすかさず高速タックルを決める。しつこく脚に食らい付き、寝技から相手の背後を取った。
6―0でリードした第2ピリオドも攻撃の手を緩めず、3分37秒で無失点のテクニカルスペリオリティー勝ち。セコンドについた父俊一さんに飛びつき、全身で喜びを表現した。「本当はタックルしようと思った。ありがとう、という気持ち」と照れくさそうな娘に、父は「抱きついてくるとは思わなかった。初めてかな」とうれしそうに話した。
2017年6月。全国中学生選手権決勝で敗れ、泣きながら父に「もう弱音は吐かない」と誓った。「一緒に強くなるか」。二人三脚の闘いが始まったあの日から7年2カ月。積み重ねた公式戦での連勝は137まで伸びた。
記録が続くにつれ、数字について聞かれることが増えた。表向きには「意識はしていない」と言ってきたが、母千夏さんには本音をこぼす。今年1月、パリ五輪女子57キロ級代表の桜井つぐみ選手(当時育英大)に勝った東日本大学女子リーグ戦でもそうだった。
強敵との一戦を終えると、当時三重県で暮らしていた母に電話口で言った。「怖かった。頑張ったやろ?」。常に敗北の恐怖と向き合ってきた。
4歳で競技を始め、吉田沙保里さん、伊調馨さん、登坂絵莉さんら、名だたる五輪女王に憧れてきた。鍛錬を重ねてたどり着いたパリの地で、ついに自分がその存在になった。「私も夢を持ってここまで来た。キッズレスラーに何か感じてもらえるものがあればうれしい」。レスリング界の顔は、これからもマットの上で夢を見せ続ける。 (時事)
[時事通信社]
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