威圧的取り調べの検事、被告に=特捜事件巡り付審判決定―無罪確定の元社長請求・大阪高裁
業務上横領事件で大阪地検特捜部に逮捕・起訴され、無罪が確定した不動産会社「プレサンスコーポレーション」(大阪市)の山岸忍元社長(61)が、山岸氏の当時の部下に威圧的な取り調べをしたとされる田渕大輔検事(52)を刑事裁判にかけるよう求めた付審判請求で、大阪高裁(村越一浩裁判長)は8日、特別公務員暴行陵虐罪で、同検事を審判に付す決定をした。
付審判決定に不服申し立てをすることはできず、田渕検事は今後、公判で被告として審理される。最高裁によると、付審判請求が認められ、検事が被告となるのは初めて。
決定によると、田渕検事は山岸氏とともに起訴された元部下に対する取り調べの際、机をたたいて大きな音を出した上、激しい口調で「検察なめんなよ」と罵倒するなどしたとされる。
村越裁判長は田渕検事の行為について、「脅迫的な言動を約50分間行っており、弁解する気力も奪われる」と指摘。「脅迫としても態様や程度は著しく、陵虐行為に該当する」と判断した。
決定は、今回の取り調べが、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を受けて本格的に導入された取り調べの録音・録画の下で行われたことに言及。「改めて今、検察の捜査・取り調べの運用の在り方について、組織として真剣に検討されるべきだ」と求めた。
山岸氏の弁護団は決定を受け、大阪市内で記者会見し、「画期的な判断で、刑事司法の歴史が変わる」と評価した。
大阪地検の田中知子次席検事は「個別事件の裁判所の判断についてコメントは差し控えるが、今後とも適正な取り調べの実施に努めたい」とのコメントを発表した。
付審判請求は、検事や警察官など公務員による犯罪の疑いを告訴・告発したが不起訴になった場合、裁判所に刑事裁判を開くよう求める制度。最高裁によると、刑事訴訟法が施行された1949年から2022年までに付審判請求が認められ、開かれた裁判は22件あり、9件で有罪、13件で無罪・免訴が確定している。
[時事通信社]
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