勝利への執念、原動力に=連覇ならず、意地の銅―レスリング・須崎選手〔五輪〕
銅メダルを獲得したレスリング女子50キロ級、須崎優衣選手(25)=キッツ=の原動力は、人並み外れた勝利への執念だ。その陰には、勝ちを焦るあまり敗れた経験のある恩師のアドバイスがあった。連覇の夢は破れたが、周囲の支えを受け、意地を見せた。
全国の精鋭が集う日本オリンピック委員会のエリートアカデミーに中2で入り、練習量は群を抜いた。中学から指導する吉村祥子さん(55)は「控えた方がいいよ、とこちらが言うくらい。気持ちが強く、『とにかく五輪』だった」と振り返る。
練習ノートに「執念」という言葉を好んで使った須崎選手は、負けん気も人一倍。悔しさを忘れないため、準優勝の表彰状を、ベッドで横になった時に目に入るよう天井に張り、雪辱を果たした試合の前日には「勝ちた過ぎて涙が止まらない」と吐露した。
世界選手権を連覇し、臨んだ東京五輪選考レースは大事な一戦で敗れ、一時は出場が絶望的に。「0.01%の可能性」(吉村さん)を手繰り寄せ、金メダルまでの階段を一気に駆け上がった。
東京五輪以降、国内外で無敗だった。吉村さんは、そんな無敵の須崎選手にも「焦り過ぎて、頭がいっぱいいっぱいの時もある」と言い、自らの経験を踏まえたアドバイスを心掛けてきた。
かつて5度世界一に輝いた吉村さんは、全盛を過ぎ、けがを抱えた中で2004年アテネ五輪の代表選考に挑んだ。「負けたら引退」と勝ちを焦り、結果は予選敗退。「あのような気持ちで臨んだことを、今も後悔している」と話す。
教え子には同じ思いをしてほしくない。「広い視野を持って、今を大事にして」と日頃から伝えている。昨年9月の世界選手権直前に須崎選手がけがした際も、焦る気持ちにブレーキをかけ、精神面のサポートに徹した。
今大会、まさかの初戦で敗れ、周囲の支えで立ち直ったという須崎選手。完勝した3位決定戦で勝ち名乗りを受けると、涙を抑えきれない様子でマットを後にした。
[時事通信社]
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