将来見据え、選んだ文武両道=どん底からの復活、執念の銅―レスリング・尾崎選手〔五輪〕
五輪初出場で銅メダルに輝いたレスリング女子68キロ級、尾崎野乃香選手(21)。競技エリートながら、早くから将来を見据え、文武両道を歩む慶応大4年生だ。一時はどん底を味わったが、執念でパリのマットにたどり着いた。
レスリングとの出合いは小学2年の時。北京五輪銅メダリスト浜口京子さん(46)の試合を映すテレビにくぎ付けになった。「これやりたい!」。自宅近くのジムで習い始め、水泳を掛け持ちしながら、週5回のペースで通った。
片足タックルを得意技に、小中時代、何度も全国大会を制し、高1で日本オリンピック委員会のエリートアカデミーに入った。だが、勉学もおろそかにはしない。高校卒業後、強豪とは言い難い慶大に進学。仲の良いイラン選手にヒントを得て、「ムスリムとの共生」などを研究テーマにした。
「レスリングと違う分野を学び、新しい道を開きたかった。引退後のキャリアも考えた」と尾崎選手。とはいえ、競技への情熱が薄れたわけではない。毎日のように他大学へ出稽古に出掛けた。
2022年の世界選手権を制し、満を持して臨んだ昨夏の五輪国内選考会。主戦場にしていた62キロ級で敗れた。失意のどん底の中、頼ったのが山梨県の名門、韮崎工業高校の文田敏郎監督(62)だ。
「諦めずにやれば大丈夫」。今大会で金メダルに輝いた息子の健一郎選手(28)など多くの強豪選手を育てた文田さんの後押しで、代表が決まっていなかった68キロ級での出場に執念を燃やした。
週末は母利佳さんの運転する車で山梨入りし、弱点だったディフェンスを強化。利佳さんは「帰りの車の中で、『強くなって恩返しするしかないね』と言い合った」と振り返る。
文田さんも見守った1月の代表決定戦で、残り10秒での逆転勝ちを決め、パリへの切符を手にした尾崎選手。出国前、こう語っていた。「戦う女性のかっこいいところを見せたい」。(時事)
[時事通信社]
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