江村、覚悟決めて前へ=恐怖振り切り、万感の銅―フェンシング女子サーブル団体〔五輪〕
3点あったリードが、1点に縮まる。地元フランスの逆転を期待する大歓声がこだまする中、女子サーブルの江村は覚悟を決めた。「迷わず前に出よう」。思い切り踏み込んで剣を振るう。41―40からの4連続得点で、一気に試合を制した。銅メダル獲得が決まったピストの上で、喜びと開放感から涙があふれた。
本来の動きができずに3回戦敗退に終わった個人戦から5日。光は見えていなかった。「改善の仕方が見つからなくて、気持ちも完全には切り替えられなかった」。恐怖心を抱えながら迎えた団体。救ってくれたのはチームメートたちだった。
ハンガリーとの1回戦は、福島が9連続得点で勝利を呼び込んだ。3位決定戦では、自身が5番手で逆転された後に尾崎と高嶋が奮闘。再逆転して、アンカーの自分につないでくれた。「みんなの思いが背中を押してくれた。一人だったら前に出られたか分からない」。不安を断ち切り、エースとして仲間の信頼に応えた。
金メダル有力候補として注目を集め、日本選手団の旗手も務めた今大会。「本当にずっと苦しくて、何がいいかも分からないまま戦っていた」と明かす。目指していた色には届かなかった。それでも、プレッシャーや苦悩、さまざまな重荷を背負ってたどり着いた銅を「金メダル以上に価値がある、本当に本当に重いメダル」とかみしめる。
フルーレ、エペに続いて、サーブルで初めてのメダルを日本にもたらすことができた。「新しい歴史を勝ち取れたことは誇りに思いたい。サーブルが大好きなので」。晴れやかな笑顔が、ようやく会場のグラン・パレに輝いた。 (時事)
[時事通信社]
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