チーム内競争が力に=男子エペ、成長の銀―フェンシング〔五輪〕
無観客の東京で味わった金メダルの歓喜から3年。フェンシングの本場フランスの観客を前に、その再現はならなかった。男子エペ団体の日本は決勝でハンガリーに敗れて銀。それでも、加納虹輝選手(26)=JAL=は「金を目指していたので悔しさは残るが、メダルをみんなで持って帰れてよかった」と話した。
1回戦のベネズエラ戦で、ベテランの見延和靖選手(37)=ネクサス=の動きが悪いとみるや、ベンチはすぐさまリザーブの古俣聖選手(26)=本間組=に交代した。古俣選手は初戦こそ動きの硬さが見えたが、決勝では3戦中2戦でリードを奪い、ハンガリーを追い詰めた。「いつも通りで大丈夫と先輩に声を掛けてもらって、決勝は気持ちを軽くできた」。加納選手、山田優選手(30)=山一商事=という東京五輪の金を知る2人の間で、ただ一人の五輪初出場選手が奮闘した。
古俣選手の存在こそが、男子エペ団体チームの強さの証しだ。東京五輪前は、ほぼ固定の4人で戦っていた。宇山賢さんが引退し、代わりに古俣選手や日大の松本龍選手ら若手が加わり、5人の中から4人を選ぶという形で国際大会の団体に出場するようになった。
「(代表メンバーから)外れてしまうという危機感を持った」と山田選手。仲の良さ、団結力が持ち味のチームに生まれた競争という新たな刺激。全体の底上げは確実に進んだ。東京五輪は開催国枠での出場だったが、今回は自力で団体出場枠をつかんだ。
今大会は、加納選手が個人で金メダルを獲得。団体も決勝まで勝ち上がり、わずか1点差での銀メダル。見延選手は「メンバーが変わってもこれだけの試合ができた。間違いなく日本の実力は示せた」。欧州で最も人気があると言われるエペで、日本の黄金時代到来を感じさせるパリとなった。 (時事)
[時事通信社]
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