米大統領選前に身柄交換=交渉「白紙化」回避―プーチン氏
ロシアのプーチン大統領は1日、西側諸国との間で、スパイ罪で投獄された米国人記者を含む双方計26人の身柄交換に応じた。「冷戦終結後で最多」とされる拘束者の釈放に至った背景には、11月の米大統領選前に、ロシアに極力有利な形で取引を終える狙いがあったもようだ。
水面下の協議はドイツも巻き込み、バイデン米政権との間で進められた。発言や行動が読みにくいトランプ前大統領が返り咲くシナリオも念頭に、ロシアとして交渉の蓄積が「白紙」になるのを避ける思惑も働いたとみられる。
また、長引くウクライナ侵攻の「出口」を模索する中、身柄交換で「ロシアは交渉可能」というポーズをゼレンスキー政権の後ろ盾の西側諸国に一応は示せる。
ただ、西側諸国への過度の軟化姿勢は、国内で批判されかねない。プーチン氏は1日、釈放され帰国したロシア人工作員がモスクワの空港に到着時、自ら出迎えた。「祖国は諸君を忘れなかった」と語り掛け、今回の身柄交換が愛国的な国民に支持されるようアピールした。
一方でプーチン氏は、ロシア反体制派らの釈放に応じた。譲歩したように見えるが、過去にも政敵の元石油王ミハイル・ホドルコフスキー氏を恩赦して国外に追いやり、政治的影響力を奪った経緯がある。
今年2月に獄死した反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が生前、毒殺未遂後に療養していたドイツから収監覚悟でロシアに帰国したのは「政治生命」を保つためと言われた。ペスコフ大統領報道官は1日、身柄交換に絡んで「ロシアの敵は出国すべきだ」と述べ、国内で弱腰と受け止められないよう躍起となっている。
[時事通信社]
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