見いだされ、磨かれた原石=ピカイチな素質もメダル届かず―柔道・新添選手〔五輪〕
初の五輪に挑んだ柔道女子70キロ級、新添左季選手(28)=自衛隊=は幼少の頃から内気だった。勝負事を嫌ったが、身体的な素質に恵まれた原石は恩師らに磨かれ、世界で戦えるまでに成長した。敗者復活戦で惜しくも敗れ、メダルには届かなかった。
兄の影響で、6歳から地元の奈良県で柔道を始めた。内気な性格はこの頃から。小学校低学年の時には「戦うのが怖い」と試合直前に逃げ出したこともあった。
天理高時代は全国大会の序盤で敗退することもしばしばで、競技を続けるか悩み、動物関連の専門学校を志した時もあったという。同校で指導した白川美和さん(40)は「闘争心があまりなかった」と話す。だが、手足の長さや脚力の強さなど、素質は十分。「左季ちゃんはいいもの持ってるからチャンスはあるよ」と支え続けた。
山梨学院大監督だった山部伸敏さん(55)は初めて新添選手の試合を見た時、「こんな選手がいるのか」と驚いた。本当は対戦していた相手をスカウトするために観戦していたが、その素質に見入ったという。「均整の取れた体格。何より、両手を持って技を仕掛ける『日本の柔道』の姿に引かれた」と振り返る。
山部さんの熱心な勧誘を受け、同大に進学した新添選手は、1年先輩で今大会カナダ代表の出口クリスタ選手(28)ら猛者ぞろいの柔道部で実力を培った。練習中、投げ飛ばした相手に「大丈夫?」と気遣うことも。山部さんは「格闘技でそういう人はあまりいない」と笑う。
東京五輪は代表入りを逃したが、課題だった寝技やスタミナを強化、昨年の世界選手権を制し、パリ五輪の切符をつかんだ。磨き抜かれた原石は、今でも「試合前は不安しかない」といい、趣味の漫画やアニメで気を紛らわす。内気な性格はそのままだ。
[時事通信社]
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