加納、受け継いだバトン=個性磨いて歴史刻む―フェンシング〔五輪〕
劇場さながらの会場、グラン・パレで舞台の主役となった。フェンシング男子エペの加納虹輝選手(26)=JAL=が、個人初の金メダル。「自分がやってきた練習や、考え方が間違ってなかった。フェンシングをやってきてよかった」。団体で日本初の金メダルを獲得した東京五輪から3年。競技の本場フランスで、また新たな歴史を刻んだ。
頭からつま先まで全身が有効面で、攻撃の優先権はなく、同時に突きが決まれば双方がポイントを得るエペ。シンプルなルールで、欧州で最も人気がある種目とも言われる。海外には2メートル前後の屈強な選手も多い中、加納選手の身長は173センチ。決勝で対戦したフランスのヤニク・ボレル選手(35)とは頭一つ分ほどの差があったが、磨いてきた独自のスタイルで頂点へ駆け上がった。
「スピードとフィジカルでは負けない」。俊敏なフットワークで一瞬の隙を逃さず間合いに入り、相手が反応できないような速さで突き切る。それに加えて、山田優選手(30)=山一商事=が「虹輝が日本人で一番。あいつの剣は押せない」と評するパワー。フェンシングを始める前にやっていた体操で培った体幹の強さをベースに、屈強な体を鍛え上げた。
個人でのメダルは2008年北京大会の男子フルーレ銀メダルの太田雄貴さん以来。当時10歳だった加納選手は、その勇姿をテレビで見てフェンシングを始めた。「太田さんを超えることになるとは。感慨深いというか信じられない」。会場で快挙を見届けた太田さんは「今の日本は常連国になっている。すごくうれしい」。近年は種目を超えて国際舞台で活躍する選手が次々と登場。先駆者として切り開いた道は、確実に日本の礎となっている。
「僕を見てフェンシングを始める子が増えたら、すごくいい流れだと思う」と加納選手。北京からパリへと受け継がれたバトンは、さらに未来へつながっていく。 (時事)
[時事通信社]
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