不安消えた12番の涙=「相棒」と歩んだ3年―バスケ男子のホーバス監督〔五輪〕
3年前の8月1日。バスケットボール男子は3戦全敗で1次リーグ敗退が決まった。当時、米プロ協会(NBA)のラプターズに所属していた主将の渡辺雄太選手(千葉ジェッツ)が人目もはばからず流した悔し涙。これが、開催国枠を除いて48年ぶりに五輪切符をつかんだチームが結成されるきっかけとなった。
東京五輪後、トム・ホーバス監督(57)は悩んでいた。女子を日本バスケ初の銀メダルに導いた手腕を買われ、日本協会から届いた男子監督就任のオファー。「男子を女子と同じマインドにできるか不安があった」
体格で劣る日本は世界で通用しない―。長年指導してきた女子ではその考えを払拭することはできた。だが、それが色濃く残る男子で、世界で戦えるレベルのチームをつくれるのか。しかも期間は3年しかない。
決断を迷う中、ふと浮かんだのは、東京で目の当たりにした背番号12の涙だった。「本気で勝てると思って戦っていたからこそ、涙を流せる。私はああいう姿が好き。雄太とバスケットがしたい、と思った」
NBAでプレーする間も、オフは積極的に代表活動に参加してきた渡辺雄選手。日本代表を強くしたいという思いで突き進んできたリーダーに、ホーバス監督は絶大な信頼を寄せた。そして、一緒に選手たちの意識を変えていった。
「ベスト8」の目標を決める際も、最初に相談したのは渡辺雄選手だった。五輪出場を決めた昨夏のワールドカップ(W杯)後、自宅のある米国で直接会って話した。渡辺雄選手は「1勝とか、低い目標設定をしたくなかった。W杯の試合や、今までの成長を考えれば、無理なわけではないのかなと思った」と当時を振り返る。
「世界に衝撃を与えたい」とホーバス監督。パリから約200キロ離れたリールの地で、「相棒」と共につくり上げたチームの集大成を見せる。 (時事)
[時事通信社]
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