心揺れず、覚悟決めて=照ノ富士、理想近づく大きな節目―大相撲名古屋場所
覚悟を決めたような表情で決定戦に臨んだ。照ノ富士は勝てば優勝が決まる本割で、これまで一度も負けたことがなかった琴桜に不覚を取った。短い時間で気持ちを整え、「やることは変わらない」。気迫に満ち、花道へ向かった。
前日に苦杯をなめさせられた隆の勝が相手。もろ差しを許しても、左で抱えながら右をねじ込む。体を入れ替え、攻めに転じて寄り切り。賜杯獲得へ思わぬ足踏みもあったが、「別に。一番一番に集中するだけ」と心の揺らぎはなかった。
古傷がある膝などに不安を抱え、先場所まで2場所続けて途中休場。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も「稽古が足りない」と認める中で出場を決意した。始まってみれば、初日から10連勝。徐々に調子を上げてきた。
かねて目標に掲げてきた2桁優勝回数に到達。「目指していた理想的な相撲にちょっとは近づくことができたかな」。角界に入ってから追い求めてきた立ち合いから圧力をかけるどっしりとした取り口。土俵人生が終盤に差し掛かる中、大きな節目として捉えた。
新型コロナウイルスの影響で東京開催だった2020年7月場所で優勝した経験はあるが、名古屋の地で賜杯を抱くのは初めて。「名古屋で応援してくれた方たちの前で一回でもいいからいい姿を見せたかった」。1965年から親しまれてきた現在の会場で最後の名古屋場所。改めて強さを示し、歴史にその名を刻んだ。
[時事通信社]
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