「米国は内向き回避を」=対外債務、包括再編が不可欠―ロシア凍結資産で無償支援を・ウクライナ財務相
【キーウ時事】ウクライナのマルチェンコ財務相は19日までに、最大の支援国である米国に対し、「内向きになるべきではない」と訴え、ロシアの侵攻に対抗するための支援継続を求めた。大詰めを迎えている200億ドル(約3兆1000億円)規模の対外債務の返済交渉については、財政状況が厳しく「包括的な再編が不可欠」との見解を示した。時事通信とのインタビューで語った。
ウクライナは戦闘の長期化で深刻な財政難に直面している。マルチェンコ氏は社会・人道支援については、国際協力によって「今年必要な予算は全額手当てできている」と説明。一方で、軍事費の確保が課題だと述べ、「国債発行や一部の増税」で歳入増を図ると述べた。
ウクライナは、米国の財政資金や武器の支援が遅れたことで苦境に陥った。米大統領選候補のトランプ前大統領は支援に否定的で、トランプ政権が復活すればウクライナに大きな影響が出かねないとして警戒感が高まっている。
マルチェンコ氏は、次期米政権には「ウクライナ(支援)を国際問題の解決策と捉えることに期待する」と、支援継続を要請。米国が内政問題だけに関心を寄せれば「(ロシアにとどまらず)核兵器を持つ軍事大国による隣国侵略を許す」と述べ、世界の安全保障が脅かされると警告した。
8月1日に期限が迫る国際債権団との債務返済交渉に関しては「公正な協議を経て合意することが共通の利益」と説明。返済の一部が期限を過ぎたとしても「最終合意前の技術的な延期」であり、デフォルト(債務不履行)ではないと主張した。
一方、6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、凍結されたロシア資産の運用益を活用し、ウクライナに500億ドルを支援することで合意した。マルチェンコ氏は「支援は融資ではなく(返済義務のない)援助金であり、(使途は)無条件とすべきだ」と、軍事費に充てることも認めるよう要望。3000億ドル規模とされる凍結資産全体の活用が「主要戦略だ」と訴えた。
◇セルヒー・マルチェンコ氏
セルヒー・マルチェンコ氏 ウクライナ国立財政税務大学院で修士課程を終え、財務省傘下機関での研究を経て経済学博士号を取得。財務次官、大統領府副長官を歴任し、20年3月に財務相就任。81年、キーウ(キエフ)州マカリフ出身。43歳。
[時事通信社]
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