犬レースで虐待疑惑=獣医師が告発、存廃議論に―豪
【シドニー時事】オーストラリアの当局公認ギャンブルの一つ、犬レースを主催する団体で、競走犬が虐待されていた疑惑が浮上し、波紋を広げている。団体を辞めた獣医師が犬の酷使によるけがの増加や死亡数の隠蔽(いんぺい)などを告発し、所管する東部ニューサウスウェールズ州政府は調査を開始。レースの存廃を巡る議論も起きている。
犬レースで走るのはグレイハウンドと呼ばれる俊足の狩猟犬種で、競馬と同じように着順を予想してお金を賭ける。最大都市シドニーなどにレース場がある。
2023年末まで団体の主任獣医師を務めたアレックス・ブリタン氏は、後任への引き継ぎ文書で、犬が最短2日おきに出走を強いられてけがが増えているとし、間隔を4日空けるよう主張。また、調教師が骨の強化を目的に人間用の骨粗しょう症薬を与え、かえって骨をもろくさせているとの懸念を示した。
団体は23年の競争犬の死亡数を970匹と公表したが、ブリタン氏は3384匹に上るという別のデータを示し、多数の死骸が冷凍庫に置かれていたと明かした。さらに、団体が引退した犬を里親に引き渡した数を水増しし、虚偽の報告をしていたとも指摘した。
ブリタン氏の告発が7月に明るみに出たことを受け、州政府は動物福祉の専門家らによる調査に着手。年内に結果を公表する。州政府は経済効果を考慮してレース継続を認める方針だが、ブリタン氏は「事業は持続不可能だ」と強調。州議会の一部議員は「ギャンブルのために動物を虐待すべきではない」と廃止論を唱えている。
[時事通信社]
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