2024-07-13 15:54政治

欧州外交、対中で手応え=岸田首相、政権立て直しは不透明

 【ベルリン時事】岸田文雄首相は14日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議など米国とドイツでの一連の外交日程を終え、帰国する。戦後最も厳しいとされる安全保障環境に直面する中、首相は欧州の関心をアジアに引き寄せたと「岸田外交」の成果をアピール。ただ、9月に想定される自民党総裁選に向けた政権浮揚効果は不透明だ。
 「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障はますます不可分になっている。こういった認識が欧州でも着実に深まっていると感じた」。首相は12日、今回の外遊を締めくくるドイツのショルツ首相との共同記者会見でこう胸を張った。
 首相のNATO首脳会議出席は、歴代首相で初めてだった2022年から3年連続だ。首相は毎回、ロシアのウクライナ侵攻と中国の覇権主義的な動きを念頭に「きょうのウクライナはあすの東アジアかもしれない」と訴えてきた。
 首相同行筋によると、首相の主張は欧州各国に浸透しつつある。NATO加盟国は米ワシントンで11日まで開かれた首脳会議で、中国について「ロシアの重要な支援者」だと批判した共同宣言を採択。首相は同会議で「欧州各国が関心を強めていることを歓迎する」と演説した。
 首相は米国に続いてドイツを訪問。12日の首脳会談では中国の経済的威圧を念頭に、経済安全保障に関する協議の枠組みを創設することで合意した。ドイツは欧州各国の中で中国との友好を比較的重視してきただけに、外務省関係者は「中国への圧力になる」と意義を語った。
 首相が外交成果を力説する背景には、自民内から退陣要求が噴き出す中、政権立て直しの足掛かりにしたいとの思惑もある。内閣支持率の反転材料は党総裁選までの間に外交ぐらいしかなく、首相は週明けからの「太平洋・島サミット」、8月前半の中央アジア訪問にも全力を挙げる構えだ。
 ただ、首相と同様にNATO首脳会議で反転攻勢を狙ったバイデン米大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領を「プーチン大統領」と呼び間違えるなどの失態を繰り返し、11月の大統領選からの撤退圧力がかえって強まる結果に終わった。
 自民関係者は「外交で成果を出しても国民に響かない。政治とカネの問題で責任を取らない首相は信頼されていない」と厳しい見方を示す。米国からドイツに飛び立つ前に総裁選への対応を問われた首相は「結果を出すことに全力を挙げている。それ以外のことは今考えていない」と語った。 
[時事通信社]

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