環境激変、乗り越えたか=金候補の17歳、安楽―スポーツクライミング・パリ五輪「最高の輝きへ」
パリ五輪のスポーツクライミング男子複合代表、安楽宙斗(JSOL)は6月、所属先決定の記者会見に、普段の詰め襟の制服とは違うスーツ姿で現れた。「こういう場は得意じゃない。よく頑張ってやってるな」。まだ17歳の高校生だけに緊張した面持ちだったが、精神面の成長は周囲が認める。
ワールドカップ(W杯)初参戦は昨年だった。ボルダーとリードでそれぞれ年間総合優勝。一気にクライミング界の中心に躍り出た。力を入れたり、抜いたりを自在に行い、体力の消耗を抑えてひょうひょうと登る姿は「脱力系」と注目を浴びた。
金メダル候補として臨むことになった今季。序盤は国内外で思うような成績を残せなかった。日本代表の安井博志ヘッドコーチは、安楽が自分の置かれた状況の激変に適応できず、「それ(昨年の活躍)ができた理由も含めて、消化できないまま今シーズンに入ってしまった」とみていた。
安楽自身も学校生活について、「みんなもどうしていいか分からないと思うが、『オリンピアン』という肩書が邪魔して、純粋に接してもらえない。普通に話ができない」と戸惑いを隠せなかった。
再び上昇気流に乗り、米ソルトレークシティーで5月に行われたW杯のボルダー第2戦で今季初優勝。安井コーチは安楽がうれし泣きする姿に、「また新しい目標が見つかって、すごく気持ち良く競技ができるようになる」と感じた。重圧をいくばくか乗り越えたという印象を抱いたからだ。
安楽は「自分の実力がどれだけ通用するのか楽しみ」と本番へ意気込む。今は伸び伸びと表彰台へ挑めそうだ。
[時事通信社]
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