自民、手術要件見直しで調整=性別変更、党内論議難航も
性同一性障害特例法の一部規定は憲法違反だとする昨年10月の最高裁の判断を受け、自民党は戸籍上の性別を変更するのに手術が必要だとする現行規定を見直す方向で調整に入った。代わりに「心の性」に基づく一定期間の社会生活を要件とすることを検討する。ただ、党内では手術を不要とすることへの異論も根強く、集約は難航しそうだ。
特例法が定める性別変更の5要件のうち、「生殖腺がないか生殖腺の機能を永続的に欠く」(生殖不能要件)と「(変更する)性別の性器に近似する外観を備える」(外観要件)は手術要件と呼ばれる。最高裁は昨年10月、生殖不能要件を違憲と判断。さらに広島高裁は10日、外観要件も「違憲の疑いがある」との見解を示した。
最高裁判決を受けて法改正を検討してきた党の「性的マイノリティに関する特命委員会」は6月27日、政調審議会に報告書を提出。この中で生殖不能要件について「削除すべきだ」と指摘し、外観要件に関しても「改正・削除することで異論はなかった」と見直す方向性を示した。
手術に代わり、一定期間、(1)心と体の性が一致しない状態が続いている(2)心の性に基づく社会生活を送っている―の2要件を設けることが有力だと明記。具体的な期間については「2年」とする意見が出たものの、慎重論もあるため、さらに検討を続けるとしている。
一方、党内では保守派を中心に「男性の身体のまま女性のトイレや銭湯に入られたら困る」(若手)などと外観要件の堅持を求める意見も相次ぐ。
報告書の扱いは渡海紀三朗政調会長に一任されたが、自民は内容を公表せず、党内論議は宙に浮いている。閣僚経験者は「外観要件は違憲が確定していない。社会の根底に関わる問題で、拙速に議論できない」と語った。
[時事通信社]
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