最高裁判決、トランプ氏に追い風=大統領選介入の裁判に遅れ―米
【ワシントン時事】米連邦最高裁は1日、2020年大統領選の結果を覆そうとした事件で起訴されたトランプ前大統領(78)について、在職中の公的行為に関する不起訴特権を認め、同氏の行為の公私を見極めるよう下級審の地裁に差し戻した。これにより、11月の大統領選前に同事件でトランプ氏の刑事責任が明らかになる可能性はほぼなくなった。返り咲きを目指す同氏には大きな弾みとなる。
◇大勝利
「きょうの歴史的判断は、私に対するバイデン(大統領)の魔女狩りを全て終わらせるだろう」。トランプ氏は判決を受け、SNSで「大勝利」と喜んだ。
地裁は起訴事実を改めて精査するが、大統領の行為に関する公私の区別は難しい。前代未聞の選挙転覆事件の公判は、大統領選後にずれ込む公算が大きい。トランプ氏としては、大統領選に勝てば起訴自体を取り下げることができるため、本選前の判決回避はベストシナリオだった。
スミス特別検察官は昨年、大統領選の敗北を受け入れず、バイデン氏の当選を認めないよう各所に圧力をかけるなどの不正を画策したとしてトランプ氏を起訴。選挙に不正があったと虚偽を吹聴し、21年1月の連邦議会襲撃事件を招いたと指摘した。
これに対し、トランプ氏は「在任中の行為は弾劾裁判で有罪にならない限り刑事責任を免れる」と主張し提訴。一、二審は敗訴したが、最高裁は公的行為に限り免責を認めた。
◇判断は国民に
9人の判事のうち、賛成6、反対3で党派色が分かれた。リベラル系のソトマイヨール判事は、仮に大統領が政敵を暗殺しても罪に問われなくなると警告。「大統領は今や、法を超越する王となった」と厳しい反対意見を付した。
バイデン氏はホワイトハウスで緊急演説し、判決を「危険な前例になる」と非難。「トランプが権力維持のため暴力に訴えても許容するのか、国民は決めなければならない」と有権者に迫った。
だがバイデン氏は今、選挙戦最大の危機を迎えている。先のテレビ討論会で言葉に詰まるなどの失態を演じ、高齢不安はピークに。本人や周辺は否定するが、撤退を求める声はやまない。前任者の脅威を語るその足元は揺らいでいる。
[時事通信社]
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