製造業景況感、小幅に改善=非製造業4年ぶり悪化―円安でコスト増・6月短観
日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でプラス13と、3月の前回調査のプラス11から2ポイント改善した。幅広い業種で価格転嫁が進み、2四半期ぶりに改善した。ただ、急速な円安進行による原材料・エネルギー価格の上昇に加え、トヨタ自動車などで6月に新たに発覚した認証不正に伴う車の生産・出荷停止が重しとなり、小幅の改善にとどまった。
大企業非製造業はプラス33(前回プラス34)と、16四半期ぶりに悪化した。訪日外国人による消費が旺盛で高水準を維持したものの、原材料高などに加えて人件費の高騰が響いた。
DIは、業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」を引いて算出する。
大企業製造業は16業種のうち、素材産業を中心に9業種で改善した。ただ、自動車はプラス12(同プラス13)と小幅に悪化。ダイハツ工業などの認証不正に伴う生産・出荷への影響は解消されつつあるが、他メーカーでも不正が見つかり、再び生産に影響した。鉄鋼や食料品は原材料などのコスト増、生産用機械は中国の景気減速が響き、それぞれDIが低下した。
大企業非製造業は12業種のうち、5業種で悪化した。原材料や人件費の高騰で宿泊・飲食、対個人サービス、建設のDIが低下。小売りは値上げが購入品数の減少を招き、プラス19(同プラス31)と大幅悪化した。
人手が「過剰」と答えた割合から「不足」を引いた雇用人員判断DIは、全規模全産業でマイナス35(同マイナス36)。深刻な人手不足が続いている。
先行きの景況感は、大企業製造業がプラス14と小幅ながら改善の見通しで、車や半導体の生産回復に期待する声が聞かれた。一方、非製造業はコスト増への懸念からプラス27と悪化を見込む。
全規模全産業の2024年度の想定為替レートは1ドル=144円77銭(同141円42銭)と円安方向に修正。24年度の大企業全産業の設備投資計画は、前年度比11.1%増となった。
◇日銀短観のポイント
一、大企業製造業DIはプラス13と2期ぶりの改善。先行きはプラス14
一、大企業非製造業DIはプラス33と16期ぶりの悪化。先行きはプラス27
一、中小企業製造業DIはマイナス1と横ばい。先行きはゼロ
一、中小企業非製造業DIはプラス12で2期連続の悪化。先行きはプラス8
一、大企業の自動車DIは1ポイント悪化のプラス12
一、大企業の宿泊・飲食サービスDIは3ポイント悪化のプラス49
一、大企業製造業の販売価格DIは4ポイント上昇のプラス29
一、大企業製造業の仕入価格DIは5ポイント上昇のプラス47
一、24年度の大企業全産業の設備投資計画は前年度比11.1%増
一、全規模全産業の24年度想定為替レートは1ドル=144円77銭
◇6月日銀短観の主な指標
3月 6月 9月予想
▽業況判断指数
(DI、「良い」―「悪い」)
大企業製造業 11 13 14
大企業非製造業 34 33 27
中小企業製造業 ▲ 1 ▲ 1 0
中小企業非製造業 13 12 8
▽販売価格判断指数
(DI、「上昇」―「下落」)
大企業製造業 25 29 27
大企業非製造業 27 29 30
▽仕入価格判断指数
(DI、「上昇」―「下落」)
大企業製造業 42 47 44
大企業非製造業 43 47 46
▽雇用人員判断指数
(DI、「過剰」―「不足」)
大企業製造業 ▲17 ▲18 ▲20
大企業非製造業 ▲37 ▲39 ▲38
▽24年度設備投資計画(土地含む、前年度比増減率%)
大企業製造業 8.5 18.4 ―
大企業非製造業 1.5 7.0 ―
▽全規模全産業の24年度想定為替レート(6月)
1ドル=144円77銭
(注)▲はマイナス、―は数値なし
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