県警本部長「隠蔽指示ない」=前部長起訴、公益通報も否定―不祥事情報漏えい・鹿児島
不祥事に関する内部文書を第三者に漏らしたとして、鹿児島県警の前生活安全部長が起訴されたことを受け、鹿児島県警の野川明輝本部長は21日の定例記者会見で、県警の捜査の結果、「隠蔽(いんぺい)を指示した事実はない」と述べた。また、前生安部長の行為は「公益通報ではない」と判断したと明らかにした。
一方、県警枕崎署員の盗撮事件で捜査状況の確認や指示を徹底しなかったとして、警察庁は野川本部長を長官訓戒とした。
野川本部長は会見で、前生安部長の本田尚志容疑者(60)が漏えいした文書には、同本部長が隠蔽を指示したとの記載はなく、前刑事部長が指示したなどと書かれてあったと指摘。同部長の名誉を毀損(きそん)している点や公表を望んでいないストーカー被害者の氏名などの記載があることから、「公益通報には当たらない」と述べた。
本田容疑者は逮捕後の今月5日、鹿児島簡裁で開かれた勾留理由開示手続きで意見陳述し、動機について「野川本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽しようとしたことが許せなかった」と主張していた。一方、野川本部長は7日、取材に対し「隠蔽を意図して指示を行ったことは一切ない」と否定した。
鹿児島地検は21日、国家公務員法(守秘義務)違反罪で、本田容疑者を起訴した。同容疑者は同日午後、勾留先の鹿児島中央署から保釈された。起訴状などによると、同容疑者は退職後の3月28日ごろ、県警霧島署員によるストーカー規制法違反事件の被害者の氏名などが書かれた文書を札幌市のライターに郵送し漏えいしたとされる。
県警では今年に入り、本田容疑者の事件以外にも警察官が逮捕される事件が3件発生するなど不祥事が続発。警察庁は24日から、県警本部に首席監察官ら3人を派遣し、特別監察を実施する。本部長ら幹部への聞き取りなどを通じ、各事件の事実関係を検証するほか、再発防止策の作成を支援するという。
◇鹿児島県警の不祥事を巡る動き
2023年10月25日 ウェブメディアが容疑者氏名などが記された「告訴・告発事件処理簿一覧表」を掲載
24年2月29日 ストーカー事案で霧島署員を処分
24年3月末 生活安全部長だった本田尚志容疑者が不祥事について記載した内部文書を札幌市のライターに郵送
4月 8日 同処理簿一覧表を漏えいしたとして、県警が曽於署の巡査長を逮捕。
関係先としてウェブメディア側を捜索し、押収物に本田容疑者が郵送したとみられる文書の画像
5月13日 女子トイレで盗撮したとして、枕崎署の巡査部長を逮捕
31日 内部文書をライターに漏えいしたとして本田容疑者を逮捕
6月 5日 本田容疑者が勾留理由開示手続きで「県警本部長が不祥事を隠蔽(いんぺい)しようとした」と主張
7日 本部長が隠蔽指示を否定
21日 鹿児島地検が本田容疑者を起訴
※県警発表や関係者取材などを基に作成
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