改憲原案、今国会提出断念=首相の総裁再選戦略に影響―自民
自民党は憲法改正原案の今国会への提出を事実上断念した。大規模災害時などに国会議員の任期延長を可能にする緊急事態条項案の提出を目指してきたが、立憲民主党などの反対を押し切って強行すれば、派閥裏金事件を受けた政治資金規正法改正案の審議に影響は避けられないと判断した。
これにより、岸田文雄首相(自民総裁)が目指してきた9月の総裁任期満了前の改憲実現は絶望的となった。保守派からは反発が出るとみられ、総裁選での首相の再選戦略に影響しそうだ。
9月までに改憲を実現するには、今国会中に改憲原案を審議した上で、衆参両院の3分の2以上の賛成で発議し、国民投票に付する必要があった。このため、自民は公明、日本維新の会、国民民主各党などと協調し、緊急事態条項の条文案作成のための起草委員会設置を衆院憲法審査会で繰り返し提案してきた。
しかし、立民は共産党などと共に起草委設置に反対。自民内では改憲勢力だけで条文化と提出に踏み切る案も浮上したが、立民が規正法改正案の審議拒否をちらつかせたため、「今国会での条文化は無理だ」(党幹部)との判断に傾いた。緊急事態条項を巡り、公明の衆参両院議員の間で温度差が表面化したことも影響したとみられる。
与党筆頭幹事を務める自民の中谷元・元防衛相は13日の衆院憲法審で、緊急事態条項の「骨格」を記した書面を提示。立民などに条文案作成への参加を改めて呼び掛けたが、立民の城井崇氏は「条文化の段階に至っていない」と反発した。
今国会の会期末は23日に迫っており、衆院憲法審の残された定例日は20日のみ。しかし、立民が内閣不信任決議案を提出すれば開催できない可能性がある。自民内には閉会中審査を積極的に開いて起草を目指す動きもあるが、自民関係者は「保守派の失望は避けられない」と指摘している。
[時事通信社]
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