強制送還、母国で待つ死=改正入管法、10日全面施行―当事者「命守らない法律」
相当の理由がなければ難民申請3回目以降の人を申請中でも強制送還できるようにする改正入管難民法が10日、全面施行される。在留資格がない外国人の収容や送還のルールの大幅な見直しになるが、当事者からは「帰国すれば命の保証はない」との声が上がり、強制送還への懸念は根強い。
「命を守らない法律だ」。ミャンマーから逃れてきたイスラム系少数民族ロヒンギャのミョーチョーチョーさん(38)は改正法を強く批判する。高校生の時にミャンマーの軍事政権に問題意識を持ち、民主化運動に参加。運動は「命懸け」だったといい、政権との対立により家族にも危害が及ぶようになったという。
2006年に来日後、3回行った難民申請はいずれも却下された。「A4の紙1枚で決められた」。決定を不服として出入国在留管理庁の関係機関に対し、難民と認めるよう審査請求をしているが先行きは不透明だ。
「強制送還され帰国したら命の保証がない。どうすればいいのか」と途方に暮れる。3回目の申請中という知人からは「厳しい法律ができてしまった。もう死にたい」と電話が来るといい、不安を漏らす日々だ。
12年に来日したカメルーン人男性(61)は「難民申請は人権の一つだ」と訴える。男性は母国では労働運動に携わり、無賃金労働の解消などを求めて政府と対立。同僚が殺され、自身も政府から追われる身となり日本に逃げてきた。
2回の難民申請はいずれも却下された。2回目の申請をした18年から2年間は入管施設に収容されたが、「刑務所のような場所で精神的に追い詰められた」と振り返る。
収容中の18年11月、不認定処分の取り消しを求めて東京地裁に提訴した。地裁では請求が認められたが、今年2月には東京高裁で地裁判決を覆された。現在は収容を一時的に解除する「仮放免」の状態で、難民認定を求めて最高裁に上告中だ。
入管制度に振り回される人生。男性は「私たちは皆同じ人間で、動物のように扱うべきではない」と語気を強める。「私たちを強制送還して殺すのはやめて」と涙を浮かべながら訴えた。
[時事通信社]
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