2024-06-08 14:15社会

北里の書簡下書き、初公開へ=新千円札の顔、新渡戸にお礼―博物館「貴重な資料」

北里柴三郎が新渡戸稲造に送ったとされる書簡の下書き=4日、東京都港区
北里柴三郎が新渡戸稲造に送ったとされる書簡の下書き=4日、東京都港区

 7月3日に発行が始まる新千円札の「顔」となる北里柴三郎が、旧五千円札に肖像が使われた新渡戸稲造に宛てた書簡の下書きが保管されていることが8日、分かった。所蔵する北里柴三郎記念博物館(東京都港区)は発行開始当日に初公開する方針で、担当者は「時代を切り取った貴重な資料だ」と話している。
 北里は破傷風の血清療法を確立した医学者で、新渡戸は国際連盟事務次長を務めた教育者だった。下書きは1917年11月に書かれたもので、医学や科学の専門家などが招かれる講演会に新渡戸を講演者として招いた際のものとされる。
 新渡戸は下書きが書かれる前に講演を承諾していたとみられ、文面も「快諾していただきありがとうございます。私もあいさつしますのでよろしくお願いします」と北里が礼を述べる内容だった。筆跡から、講演会の事務局の担当者が書いたとみられる。新渡戸は講演の中で、台湾の産業発展に尽力した経験から、占領ではなく台湾の人々の利益を尊重すべきだなどと訴えたという。
 博物館には、講演会に関する資料などがとじられた書類一式が所蔵されていた。博物館が新紙幣発行を機に書類の調査や研究を進めたところ、書簡の下書きが見つかったという。担当者の森孝之さん(69)は「資料からは日本の科学技術の進歩も読み取れる。代筆だとしても、当時書かれたものがあること自体に価値がある」と語る。
 新渡戸の業績を研究する新渡戸基金(盛岡市)の藤井茂理事長(74)は、「何も接点がないと思っていたので驚いた。新渡戸の研究にまた一つ新しい芽が出た」と笑顔で話している。 
[時事通信社]

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