元同僚、「居場所つくる」=悩みに耳傾け、SNSで発信も―秋葉原無差別殺傷16年
東京・秋葉原の歩行者天国で2008年6月、17人が殺傷された事件は8日で発生から16年となった。「何かを抱える人の居場所をつくりたい」。死刑が執行された加藤智大元死刑囚の元同僚で、保護司となった大友秀逸さん(47)は、同じような被害者を少しでもなくそうと、殺人願望を持つ人らの悩みに耳を傾けている。
大友さんは03年、勤務先の警備会社で加藤元死刑囚と出会った。仕事のアイデアを提案するなど、真面目で一生懸命な人との印象を受けた。
同じ青森県出身で、アニメやゲームなどの趣味も合った。元死刑囚が警備会社を退職した05年以降も連絡を取り合い、近況を報告し合う関係だった。
家族についてかたくなに話さなかった加藤元死刑囚が両親から虐待を受けていたことは、事件後に知った。大友さん自身も虐待を受けた経験がある。「少しでも自分の経験を話していたら、(元死刑囚も)話をしてくれていたかもしれない」と感じた。
19年6月、SNSに「死刑囚の友達」と明かし、実名で発信を始めた。やりとりをするのは殺人願望を持つ人や、事件の関係者らだ。社会的に失うものがなく、犯罪を起こすことにためらいのない人から連絡が来ることもある。「自分が一番不幸だと思い込み、人を巻き込んで死んでしまおうと考える人が一定数いる」と大友さん。女性芸能人と「結婚したい」と訴え、会えるように頼み込んできた男性もいた。断ると「じゃあ、駅で人を殺します」と連絡してきた。
22年7月の死刑執行当日、事件の遺族から「なんでもっと早く殺してくれなかったんだ」と泣き叫びながら訴えられ、強い処罰感情を感じた。「被害者を減らすために事件を未然に防ぐことができれば」と考え、昨年、犯罪や非行をした人たちの立ち直りを支援する保護司となった。
大友さんは、さまざまな思いを抱える人とやりとりをする時、これまで隠してきた自らの虐待や自殺未遂などの経験を話すことにしている。電話相談窓口の開設も進めており、「(元死刑囚と)同じように、何かを抱えているのに吐き出せない人の居場所をつくりたい」と話した。
[時事通信社]
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