韓国反発、世界遺産推薦までも曲折=専門家「歴史の発信を」―佐渡島の金山
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)から「情報照会」を勧告された「佐渡島(さど)の金山」。2018年から有力な政府の推薦候補に挙がっていたが、「強制労働」を巡る韓国の反発を背景に、推薦されるまで異例の経緯をたどった。専門家は「金山の歴史、当時の出来事を情報発信するなどの対応が必要だ」と強調する。
新潟県などは06年、金山を世界文化遺産候補として文化庁に提案し、10年にはユネスコの暫定リストに掲載された。文化審議会は18年、別の世界遺産候補に関する答申で、金山について「次の有力な推薦候補」と明記。21年12月、金山を国内推薦候補に選定したが、文化庁は「推薦の決定ではない。政府内で総合的な検討を行う」とする異例のコメントを出した。
金山での労働には、太平洋戦争中、朝鮮半島出身者が従事しており、文化庁の対応は政治問題化を懸念してのことだったが、韓国は「朝鮮半島出身者による強制労働の現場だ」と反発。日本政府内でも意見が割れ、推薦はユネスコへの申請期限が迫った22年2月に閣議了解された。
日本の世界文化遺産を巡る韓国の反発は今回に限らない。15年に登録された「明治日本の産業革命遺産」についても同様の理由で反対。日本が軍艦島(端島炭坑、長崎市)などで構成する遺産に関し、情報発信する「産業遺産情報センター」(東京都)を設置することで、登録を了承した経緯がある。
1999~2009年、ユネスコ第8代事務局長を務めた松浦晃一郎氏は、韓国の反発に言及した上で、「先例に習い、金山の歴史全体を説明するセンターを設けるべきだ。朝鮮半島出身の方の死者数などデータや、労働環境をしっかり発信する必要がある」と語った。
[時事通信社]
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