イランのラスロフ監督に特別賞=カンヌ映画祭、政治色濃く
【カンヌ時事】フランスで14~25日に開催された第77回カンヌ国際映画祭は、政治色の濃い内容となった。注目度が高いコンペティション部門では、映画祭の開幕直前にイランを極秘出国した反体制派のモハマド・ラスロフ監督が特別賞に輝いた。
ラスロフ氏は、イランの反体制デモを背景に引き裂かれる家族を描いた「聖なるイチジクの種」を出品。25日の授賞式会場を埋め尽くした映画関係者に万雷の拍手で受賞を祝福された。
壇上のスピーチでは「とてもうれしい」と喜ぶ半面、イランに残したスタッフらの境遇が気がかりで「非常に悲しくもある」と吐露。晴れ舞台に立ちながら、複雑な心境を明かした。
ラスロフ氏は2017年、カンヌ映画祭の「ある視点」部門で最優秀作品賞を受賞。20年のドイツ・ベルリン国際映画祭でも最高賞の「金熊賞」と、国際的に高い評価を得てきた。
しかし、母国では当局に目を付けられ2度の投獄を経験した上、パスポートも没収。さらに、国家安全保障に反する共謀罪で禁錮8年とむち打ちを宣告されたことで、刑執行前に国外へ脱出する決断を下した。
25日の記者会見では、イランの映画界に向け「当局の脅迫や検閲を恐れるな。自分の自由を信じて戦え」と力強いメッセージを送った。ただ、会見場にいたイラン人記者の男性は「彼はもう国に戻れない。(母国の)身内に危険が及ぶ恐れもある」と先行きを案じた。
今年の映画祭では、ある視点部門の審査員長を務めたカナダ出身のグザビエ・ドラン監督が24日の授賞式で、パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘停止を呼び掛けた。性暴力被害をテーマにした短編など政治的作品も話題となった。
[時事通信社]
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