2024-05-21 16:04政治

財政審、利払い費増に警鐘=「金利ある世界」での歳出改革提言

財政制度等審議会の建議ポイント
財政制度等審議会の建議ポイント

 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は21日、経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に向け建議(意見書)を取りまとめ、鈴木俊一財務相に提出した。日銀の政策変更で「金利のある世界」が現実になり、国債(借金)利払い費が膨らめば、先進国で最悪の水準にある日本の財政状況は一段と厳しさを増すと指摘。「財政を強靱(きょうじん)化させることが強く求められている」と警鐘を鳴らした。
 財政審財政制度分科会の増田寛也会長代理(日本郵政社長)は建議提出後の記者会見で「金利の上昇で利払い費が巨額に上る可能性がある。財政当局は今こそ、一層の緊張感を持ってほしい」と歳出改革を進めるよう注文を付けた。鈴木財務相は、骨太の方針の策定に向けて「財政健全化は一丁目一番地だと認識している」と語った。 
 政府は、2025年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を黒字化し、債務残高対GDP(国内総生産)比を安定的に引き下げる財政健全化目標を掲げる。建議は「実現は楽観視できる状況にはない」と懸念を示し、補正予算での基金積み増しやガソリン価格高騰対策などで膨張した、歳出構造の平時化を求めた。
 建議は、新たな財政健全化目標のあり方について直接言及していないが、政府が予算編成の際に社会保障費の伸びを高齢化に伴う自然増の範囲にとどめるといった「歳出の目安」の下での改革継続を訴えた。PB黒字化後も「一定の黒字幅の確保や財政収支の赤字幅の縮減」を促した。
 コロナ禍から回復途上にある日本経済はデフレ脱却に向かう一方、急速に進展する少子高齢化で大規模な財政支出が見込まれる。今後の財政運営について、建議では「大規模地震、新たな感染症、安全保障上の有事といった事態が発生するリスクにも備える必要がある」と明記し財政余力の確保が不可欠だと訴えた。
 国債などの残高の合計である「国の借金」は23年度末時点で1297兆円と過去最大を更新。PBは政策に使う経費が国債を発行せずに税収などで賄えるか否かを示す指標で、国・地方のPBは1992年度以降一貫して赤字が続いている。債務残高対GDP比は約250%に達する。

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