人口流出、若年層で深刻=復興の担い手減少に危機感―能登地震
![取材に応じる石川県珠洲市狼煙町地区区長の糸矢敏夫さん=18日、同市](https://img.sp.m.jiji.com/image/out/20240520at39S_p.jpg?updated=1716210542)
能登半島地震の被災地域で、若年層の人口流出が激しい。石川県は「創造的復興」を目指すが、今なおがれきが多く残る被災地の再建には長い時間がかかると予想される。地元住民は復興の担い手がいなくなることに危機感を募らせている。
地震の被害が最も大きかった輪島、珠洲両市の4月1日現在の年齢別人口を見ると、30歳未満は1年前と比べ、輪島で約12%、珠洲で約8%減った。70歳以上はそれぞれ約4%、約5%のマイナスで、若年者の流出がより深刻だ。
「創造的復興というけど誰がするんや。じいさん、ばあさんにはできんよ」。能登半島最先端の珠洲市狼煙町地区で区長を務める糸矢敏夫さん(69)は若者の流出に頭を抱える一人だ。仮設住宅ができてインフラが復旧しても、戻る人が多いとは思えないという。
なぜ若者は出て行くのか。糸矢さんは「簡単な話で、食えないからだ。食えるようになったら、ほっておいても人は来る」と話す。
糸矢さんは2年前、国の「特定地域づくり事業」の認定を受け、人手を必要とする飲食店や農家などに、都市から来た若者を派遣する協同組合を立ち上げた。若者は地域に移住し、「マルチワーカー」として季節や曜日ごとに異なる仕事をする仕組みだ。
一時は10人の若者を雇うなど軌道に乗ったが、震災が直撃。5人は能登を去った。雇用した若者の中には住み続けることを決意して地元で正社員として働き始めた人もいたが、震災で住む場所を失い、やむなく別の地域へ移ったという。
糸矢さんは、若者が定着するために、第1次産業で食べていける仕組みが必要と語るが、ハードルは高い。「給料をきちんと保証して安価な住居があれば、人は来る」として、まずは若者が住む公営住宅などの確保が必要だと訴える。
石川県は復興プランで、定住しなくても地域づくりに積極的に関与する「関係人口」を増やす取り組みに力を入れるが、糸矢さんは十分な効果を得られるか懐疑的な見方を示す。「ここでは牛の世話や草刈りもしなければならない。定住して根っこの部分で頑張ってくれる人がいないと地域は維持できない」とくぎを刺す。
[時事通信社]
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