今こそ「ONE LOVE」=ボブ・マーリー伝記映画の監督・主演が語る
17日公開の米映画「ボブ・マーリー:ONE LOVE」のレイナルド・マーカス・グリーン監督(42)と主演のキングズリー・ベンアディル氏(37)が来日し、欧州議会選や米大統領選で二極化が扇動される現在、ジャマイカのレゲエ歌手、故ボブ・マーリーのメッセージが「今こそ時宜にかなっていないか」と問い掛けた。「一つになって愛し合えば楽しい」と訴えたボブ・マーリーは1978年、内戦寸前のジャマイカで対立各派を和解に導いた。今回の伝記映画で中心に据えられたエピソードとなっている。
東京都内で16日、時事通信の取材に応じた。ボブ・マーリーは、カリブ海の島国が生んだ音楽家。81年の死去まで36年間の短い生涯で、ジャマイカの音楽レゲエを世界に知らしめた。
70年代のジャマイカは、マンリー首相(在任72~80年、89~92年)の与党・人民国家党(PNP)と、80~89年に首相となるシアガ氏率いる野党・ジャマイカ労働党(JLP)の対立が先鋭化。ボブ・マーリー自身、76年に銃撃され、英国に避難するが、そこで世界的なヒット・アルバム「エクソダス」(77年)を完成させる。
78年の凱旋(がいせん)帰国に伴うコンサート会場で、ボブ・マーリーはマンリー首相とシアガ氏を壇上に招き握手をさせた。グリーン監督は、和解実現の背景として、ボブ・マーリーがここに至るまで「音楽を通じ世界に発信してきた『理解し合う力は憎み合う力に勝る』というメッセージ」があると指摘。その姿勢をジャマイカ市民が強く支持し対立双方の背中を押した。
ベンアディル氏は、役作りのため1年近く生前のボブ・マーリーの肉声を毎日聴き続け撮影に挑んだ。複雑な生い立ちのボブ・マーリーは「自身の葛藤を分かりやすい言葉で伝え、同じような葛藤を持つ人々の心を揺さぶった」と考えている。映画公開で、78年と同じように「何らかの前向きな影響を世界の政治や社会にもまた与えられたらいいと願っている」とグリーン監督は述べた。
[時事通信社]
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