実質賃金プラス、遠のく恐れ=一段の円安、輸入物価押し上げ
物価上昇が給与の伸びを丸2年上回っている。9日発表された3月の毎月勤労統計調査(毎勤統計)では、物価の変動を反映させた実質賃金が前年同月比2.5%減と、過去最長の24カ月連続でマイナスを記録した。早ければ今夏にも見込まれていた実質賃金のプラス転換が、足元で一段と加速した円安による輸入物価の押し上げで、遠のく恐れも出てきた。
基本給と残業代などを合わせた名目賃金は27カ月連続プラス。連合によると、2024年春闘の平均賃上げ率は5%超と33年ぶりの高水準に達しており、6月以降の毎勤統計に順次反映される。このため実質賃金が早期にプラス転換するとの見方が強まっていた。
しかし、4月後半には外国為替市場で1ドル=160円台を記録するなど円安が急速に進行したことで、状況が一変。中東情勢の悪化で原油価格の高止まりが続く中、円安により輸入コストが上昇し、物価高に拍車を掛ける。
さらに5月以降の電気料金は、再生可能エネルギー賦課金の増額や、政府による補助金の縮小・終了で値上がりする見通しだ。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、「賃上げの恩恵が輸入物価の上昇で相殺される」と指摘する。実質賃金がプラスに転換する時期についてのエコノミストらの見通しは、7~9月期から25年以降と幅広くなっている。
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