イラン、強硬貫き大規模報復=打撃は軽微、国内意識か
【イスタンブール時事】イランが在シリア大使館空爆に対する大規模な報復攻撃に踏み切った。前例のないイランからイスラエル本土への攻撃で強硬姿勢を貫いた形だが、イスラエルは対抗措置を予告。イランは「反撃されればもっと厳しく対処する」(サラミ革命防衛隊司令官)と警告しており、報復の連鎖が中東情勢の緊迫化を招く懸念が強まっている。
イランや親イラン組織がイスラエルを狙った300以上の無人機やミサイルのほぼ全ては迎撃され、イスラエル側に甚大な人的被害はなかった。ただ、イランのメディアはSNSなどで、イスラエル南部ネゲブ砂漠とされる場所にミサイルが落ち、大きな炎が上がる映像を繰り返し報じた。
イラン最高指導者ハメネイ師は、大使館空爆を「イラン本土への攻撃と同じだ。罪は罰せられる」と糾弾。反イスラエル感情をあおり、保守強硬派を中心に強力な報復を求める声が高まった。反撃能力と戦果を誇示する背景には、「弱腰」との批判を避けたい思惑もあるとみられる。
イランの報復は大掛かりだったが、数十分で届く弾道ミサイルよりも到達まで数時間かかる無人機や巡航ミサイルをまず発射してイスラエル側に対策の猶予を与えた。標的も「民間人は狙っていない」(アブドラヒアン外相)と軍事施設に限定した。「米国やシオニスト(イスラエル)のいかなる脅威にも釣り合いの取れた対応をする」(革命防衛隊)とけん制の意図は示しつつも、周到な計画で被害を最小限にとどめることで、イスラエルや米国との本格衝突は望まない意志もにじむ。
2020年に米軍が空爆でソレイマニ革命防衛隊司令官を殺害した際、イランはイラク駐留米軍基地へ弾道ミサイルで応戦。トランプ米大統領(当時)が反撃を思いとどまり、本格衝突は回避された。しかし、イスラエルのネタニヤフ首相は政治的延命や求心力回復のためにも、イランやイスラム組織ハマスと衝突拡大をいとわないとの見方もあり、暴力の応酬に歯止めがかかるかは予断を許さない。
[時事通信社]
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