「ただ使命感だけだった」=ボランティア切り盛りの市職員―14日で熊本地震8年
震度7の揺れを観測した熊本地震の前震から14日で8年となるのを前に、当時、熊本市の災害ボランティアセンター長を務め、運営を切り盛りした同市職員、中川奈穂子さん(59)が取材に応じ、「スタッフも被災者。ただ、『何とかしなければ』という使命感だけだった」と振り返った。
中川さんによると、ボランティアセンターは、そもそも開設場所を決めることから難航した。前震2日後の2016年4月16日に旧東保健福祉センター(同市東区)に開設する予定で準備を進めていたが、同日未明に本震が発生。耐震性や収容人数への不安から変更が必要になった。
「開設はいつになるのか」。そんな声も聞こえる中、同22日、同市中央区の広場に場所を変えて運営を始めた。だが、まだ被害の全容が把握できない。約1000人の活動場所を用意した日に約1300人の志願者が集まるなどし、「活動の場がありません」と頭を下げる日が続いた。
「ボランティアのためではなく、被災者のためにセンターがある」と話す中川さん。志願者から「SNSに書くぞ」と罵声を浴びたこともあったが、「ニーズはさまざま。きょうは活動場所がないが、あしたは人手が必要」と説明し、理解を求めた。
そんな日々を送った中川さん自身も被災者だ。自宅は基礎まで亀裂が入って半壊。ただ、多忙で亀裂に気付いたのは地震の1カ月半後だったという。ボランティア活動に感謝しつつ、「センターのスタッフも被災者。無事だからではなく、使命感で動いている。志願者の皆さんにも、そこを理解してほしい」と呼び掛ける。
中川さんは近く、能登半島地震で大きな被害を受けた石川県でボランティア活動をするつもりだ。「熊本地震では、ゴールデンウイーク(GW)が過ぎると、ボランティア志願者が途端に減った。でも、ニーズは変わってもあり続ける。息の長い支援が必要」と語った。
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