訪米手応えも難局続く=岸田首相、衆院補選が関門
【ローリー(米ノースカロライナ州)時事】岸田文雄首相は14日、米国訪問を終えて帰国する。バイデン米大統領から国賓待遇の歓待を受けて強固な日米同盟を内外に誇示し、米議会での演説でも手応えを得た。しかし、今回の訪米が政権浮揚につながるかは見通せず、28日投開票の衆院3補欠選挙が関門となる。
「日米がグローバルなパートナーとして、いかなる未来を次の世代に残そうとしているのか、米議会、米国民、世界に向けて伝えることができた」。首相は12日(日本時間13日)、訪問先の南部ノースカロライナ州で同行記者団にこう語った。
首相は10日の日米首脳会談で、覇権主義的な動きを強める中国を念頭に、安全保障・防衛分野をはじめ多岐にわたる連携強化で大統領と一致。議会演説では、国際秩序維持に日米が協調して対応する必要性を訴え、民主、共和両党議員から総立ちの拍手を受けた。
11月の米大統領選を見据え、ノースカロライナでは日本による投資をアピール。経済面で実利を重視するトランプ前大統領の返り咲きを意識して布石を打った。
しかし、自民党派閥の裏金事件は政権運営に影を落とす。訪米に先立ち、首相は安倍、二階両派幹部を処分し、一区切りを付けたい考えだったが、塩谷立元総務会長が再審査を請求し、首相への不満を公言。処分内容に対する世論の目は厳しく、22、24両日の衆参予算委員会で野党の追及に遭うのは確実だ。
3補選で、自民党は島根1区以外への独自候補擁立を見送り、東京15区と長崎3区は不戦敗となる。島根で敗れた場合、自民内で首相の責任を問う声が高まる可能性がある。
9月の自民党総裁任期が迫る中、再選の見通しには不透明感が漂う。訪米を契機に反転攻勢につなげたい狙いだったが、政府高官は「成果がなかなか伝わらない」と焦りを口にした。6月の通常国会会期末に合わせた衆院解散もささやかれるが、内閣支持率や党内の求心力が回復しているかは見通せず、ある自民ベテランは「首相に解散はできない」と断言した。
[時事通信社]
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