ウクライナ支援、NATO主導に=トランプ氏「返り咲き」備え
【ブリュッセル時事】北大西洋条約機構(NATO)が、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの長期的な軍事支援に向け、新たな枠組み構築に動きだした。加盟各国の裁量に任せる現状から脱却し、NATO主導の支援を目指す。支援に消極的なトランプ前米大統領の「返り咲きリスク」に備える狙いもあるとみられる。
侵攻は3年目に入り、守勢に回るウクライナは西側諸国に弾薬や防空システムの供与を求めている。NATOは3、4両日にブリュッセルで開いた外相会合で、新たな支援枠組みについて協議を開始。7月にワシントンで開く首脳会議で全会一致を目指す。NATOのストルテンベルグ事務総長は「支援の力学を変える必要がある」と強調した。
欧米メディアによると、ストルテンベルグ氏は具体策として、5年間で1000億ユーロ(約16兆4000億円)の基金創設を提案。ウクライナ軍事支援の関係国会議の調整役を、米国からNATOに移す案も出ている。
背景には、先行き不透明な米国の政治状況がある。約600億ドル(約9兆1000億円)のウクライナ追加支援予算案は、議会下院での審議が難航。成立のめどが立っていない。
11月の大統領選への警戒感も漂う。共和党の指名を確実にしたトランプ氏は2月、国防支出で相応の負担をしない加盟国を「守らない」と過去に発言したことを明かしており、返り咲いた場合、西側諸国の結束が一層揺らぐ可能性がある。
ただ、NATOの役割強化やさらなる資金拠出には、ハンガリーが反発。財源確保などの課題もあり、合意への道筋は見通せない。10年にわたりNATOを率い、10月に任期満了を迎えるストルテンベルグ氏の指導力が改めて問われることになりそうだ。
[時事通信社]
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