2024-04-01 20:46政治

処分先行、解明置き去り=野党反発「しっぽ切り」―自民党

 自民党は派閥裏金事件の関係議員39人を処分対象とする方針を決めた。岸田文雄首相は1日の参院決算委員会で、安倍派元幹部らの「政治責任」を重視し、処分を判断する意向を表明。しかし、裏金の使途など実態解明は置き去りのままで、自民党が幕引きを急ぎたい姿勢がにじむ。
 「事実の解明はもちろん大事だが、派閥幹部としてどういう役割を果たすべきだったのかという政治責任も判断しなければならない」。首相は1日の参院決算委で処分に関する考えをこう説明した。
 党執行部は塩谷立元総務会長、下村博文元政調会長、西村康稔前経済産業相、世耕弘成前参院幹事長について、党規律規約で2番目に重い離党勧告を含めた処分を週内に決める。2022年8月の安倍派協議に関与した4人は、パーティー収入の還流を止められる立場で、その責任は重いと見るためだ。
 だが、安倍派で22年4月にいったん中止を決めた還流がなぜ再開し、どんな使い道に充てられたのかという疑問は依然残る。立憲民主党の田名部匡代氏は参院決算委で、裏金問題の関係議員で「使途不明」とする政治資金収支報告書の訂正が相次いでいると指摘。「しっぽ切りして済ませたい思いだけが伝わる。『一部を処分すればいい』との考えで終わらせれば同じことをやる」と反発した。
 裏金問題で「大物」をかばう首相の姿勢も見え隠れする。日本維新の会の石井苗子氏は、還流の経緯を知ると目される森喜朗元首相への聴取をただした。首相は「具体的な関与を指摘するような発言は把握していない」と述べ、森氏の責任論に予防線を張った。
 次期衆院選への不出馬を表明した二階俊博元幹事長についても、3500万円超に上る不記載額や巨額の政策活動費に疑惑の目が注がれているにもかかわらず、党執行部は処分を見送る方針だ。首相は二階氏の不出馬表明について「党の再起を促すものだ」と評した。
 茂木敏充幹事長は1日、処分に向けて党紀委員会の開催を要請した。処分対象は39人で、収支報告書への還流の不記載が確認された80人あまりの半数にも満たない規模にとどまる。首相が会長を務めていた岸田派は元会計責任者が略式起訴されたが、首相自身は含まれなかった。
 自民内では、還流に関する具体的な内容を事実上無視し、「過去5年間で500万円以上」で処分対象を線引きしたことに反発の声が出ている。対象に含まれた菅家一郎衆院議員は記者団に「私は不記載ではなく誤記載。非常に不満だ」とぶちまけた。
 共産党の小池晃書記局長は1日の記者会見で、政治責任を重視する首相の考えに関し、「自民党全員を処分しないといけない」と皮肉り、「真相解明なき処分は適切かどうか判断できない。結局、お手盛りにしかならない」と断じた。 
[時事通信社]

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