父の死乗り越え「前を向く」=迫る津波、家に残し避難―珠洲の横場さん・能登地震
石川県珠洲市の横場松男さん(60)は、能登半島地震で父政則さん(85)を亡くした。津波が迫る中、父を置いて逃げざるを得なかった。「前向きにいく」。生きるために自分を鼓舞する。
元日の地震発生時、横場さんは自宅2階にいた。激しい揺れで立っていられず、部屋の中を転がり回った。じん肺を患う政則さんの酸素吸入器が外れ「ピーピー」と警告音が聞こえたが、なすすべはなかった。「死ぬな」。不思議と覚悟は決まったという。
揺れが収まり外にはい出ると、1階はつぶれ、家はねじれていた。1階にいたはずの政則さんらに「じいじ、ばあば」と大声で呼び掛けたが反応はない。
自宅裏の海に目を向けると、津波が迫っていた。「すまんけど、先に逃げるぞ」。助けられない申し訳なさから声を掛け、避難場所を目指した。
政則さんは1月3日に地元の消防団が見つけ出したが、息を引き取っていた。梁(はり)が顔に当たり、両腕を突き上げた状態だった。そばにあった畳の上にそっと寝かせてブルーシートで覆い、警察の到着を待ちながら一夜を明かした。
政則さんは瓦職人を辞め、トンネル工事に従事した影響でじん肺をわずらっていた。職人気質で厳しい面もあるが、孫が生まれた時には山から木を切り倒し、こいのぼりをくくり付ける棒を作った。横場さんは「何でもできる人。生きとったら、自分で(がれきを)片付けるとか言い出すだろう」と笑う。
地震前日は横場さんの娘と息子が帰省し「うまいな」と煮しめを食べながら、にぎやかな一夜を過ごした。「こんなふうになると思っとらんで」と全壊した自宅を見詰める横場さん。「寂しい」としながらも、自身を奮い立たせ片付けを進める。「振り向いても仕方がない。前向きにいかないといけない」と笑顔を見せた。
[時事通信社]
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